<第71回 介護従事者に対する新たな処遇改善>
今回は、介護業界において現在最も注目されている介護従事者に対する新たな処遇改善について、詳細が示されましたので、解説していきたいと思います。
「介護職員処遇改善支援補助金」として本年2月〜9月まで1人当たり月額9000円(年収の3%)程度の処遇改善に向けた補助金が支給されることとなります。介護職以外の職種にも支給することは可能ですが、その場合には、支給額は分散され1人当たりの支給額が減少することに留意しなければいけません。
支給に際しての要件が3点あります。
1つは「処遇改善加算Ⅰ〜Ⅲのいずれかを取得していること」。2つめは「補助額を全て実際の賃上げに活用すること」。そして3つめは従来の処遇改善加算等には存在しなかった新たなルールであり「補助額の3分の2以上を基本給か月額手当として支給すること」とされています。
従って、介護事業者は、全額月額賃金の改善を行うか、3分の2以上を月額賃金の改善として残りを一時金や賞与として支給する賃金改善計画を立てる必要があります。
補助金の申請は都道府県に行い、賃金改善計画書と実績報告書の提出が求められることとなりました。
補助額の交付率はサービスごとに示されており、介護報酬に乗じた金額となります。訪問介護2.1%、デイサービス1%、特養1.4%等となっています。どのような形で配分するか計画をしっかりと立て、職員一人ひとりに丁寧な説明を行った上で、補助金を有効活用するようにしましょう。
それほど大きな金額ではなく事務作業や手間が多いことから、申請に対して後ろ向きな事業者も存在することと思いますが、これだけメディア等でも注目されている支援策ですから、現場の職員達は期待していることと思いますので、各事業者は積極的な申請を行ってください。
なお、10月以降については、補助金ではなく、臨時の介護報酬改定を行い、『新たな処遇改善加算』として支給する方向で現在議論が進められています。
先ごろ開催された介護給付費分科会においては、委員より書類負担の手間が大きいことからも処遇改善加算については、1本化を図って欲しいとの要望が多く発言されました。しかしながら、現時点では10月以降は3つ目の加算が創設される方向です。
私が代表を務める全国介護事業者連盟においても、引き続き、現場の負担軽減に向けて、既存の処遇改善加算等との統合を実現してもらうべく、しっかりと要望活動を行っていきたいと思います。
斉藤正行氏 プロフィール
2000年3月、立命館大学卒業後、株式会社ベンチャーリンク入社。メディカル・ケア・サービス㈱の全国展開開始とあわせて2003年5月に同社入社。現在の運営管理体制、営業スキームを構築し、ビジネスモデルを確立。2005年8月、取締役運営事業本部長に就任。2010年7月㈱日本介護福祉グループ副社長に就任。2018年4月㈱ピースフリーケアグループ代表に就任。2018年6月、介護業界における横断的・全国的組織となる一般社団法人全国介護事業者連盟を結成。㈱日本介護ベンチャーコンサルティンググループの代表を務めている。