群馬県を中心に60ヵ所の介護事業所を運営するケアサプライシステムズ(群馬県高崎市)は、高崎市より助成を受け、市内高齢者を対象にした「介護SOSサービス」を提供している。保険外で要介護認定者以外もサービスを利用でき、同居家族など介護者の離職防止にもつながる。

 

 

電話1本でサービスを利用できる点が強み

 

 

家族の離職防止に

介護SOSサービスは、ヘルパーが利用者宅を訪問し、保険外の身体介護(入浴・排泄・移乗介助・見守り)、生活援助(買い物・洗濯など)のサービスを提供するもの。電話1本で利用申し込みが可能で、およそ1時間以内にヘルパーが到着する。

 

24時間、365日対応でき、料金は1時間あたり250円。サービス提供後にその場で集金する。月5回までの利用上限が設けられている。

また、高齢者が宿泊できるサービスもある。基本料金は1泊2食付きで2000円。こちらは月3回まで利用できる。

 

現状の利用件数は月80件ほど。新規の利用者も月20名ほどいて、これまでの利用者数は累計1000名以上だ。具体的な利用例として、親の介護をしている人が急な仕事や通院などで対応できない場合に同サービスを頼むケースが多い。

 

また、介護疲れを回避するためのレスパイト目的での利用のほか、高齢者から、「自宅で転倒して起き上がれなくなってしまった」など急を要する連絡もある。依頼は電話による直接の申し込みのほか、市が設置する高齢者総合相談窓口「高齢者あんしんセンター」からの依頼にも対応する。

 

 

中嶋友紀課長は、「『まさに今、困っている』人に、即座に支援が届く点がこのサービスの利点です」と語る。
「普段介護は必要ないが、困った時は少し支援して欲しい」場合に利用可能なサービスであるため、施設に入所せず在宅で過ごす期間の延長にも貢献する。

 

中嶋友紀課長

 

市が予算を確保

このサービスは、高崎市による介護離職防止施策の一環として2016年から実施されている。富岡賢治市長が発案、命名した。

 

21年度は、約9000万円の予算を確保した。広報活動は市がHPなどの媒体を使って行っている。ケアサプライシステムズがサービスを提供し、実績ベースで市に事業費用を請求する。訪問件数などにより前後するが、月の報酬は340万円程度となっている。市内3ヵ所の訪問介護事業所を有し全域をカバーできることから、市は同社と協働で事業を展開していくことを決定した。

 

実働するヘルパーは、「訪問介護ステーション わかば」の職員だ。46名が週に数日、介護SOSのヘルパーとして活動する。事務所で待機し、依頼の連絡が入れば現場に向かう。給与は、「サービス対応手当(表左)」に、利用者へのサービス提供時間に応じて支払われる「サービス実働手当(表右)」を加えた金額となる(例「昼間に勤務し、利用者へ3時間サービス提供を行った場合」:3915円+1900円×3時間稼働=9615円)。

 

職員の給与体系

 

職員からは、「毎回異なる人と接するので、神経を使う。しかし、困っている人をすぐに支援でき、それがとても喜ばれるのでやりがいを感じる」との声が挙がる。また、「わかば」と「介護SOS」、業務内容が異なる双方の勤務を経験することで、スキルアップにもつながっているという。

 

狩野敦史部長

 

ADLの低下などで利用回数の増加が見られるようになった場合は、長寿社会課へ報告。あんしんセンター、介護保険のサービスも含め、適切な支援につながるようにする。

狩野敦史部長は同社におけるこの事業は、「収益を上げる事業というわけではなく、今後、保険外サービスを実施する際の参考になれば、と考えています」と語った。

 

 

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