大手信用調査機関の東京商工リサーチ(東京都千代田区/以下・TSR)は1 月14 日、2021 年の老人福祉・介護事業の倒産件数を発表した。合計81 件で、過去最多となった前年118件との比較では、31.3%の大幅減となった。減少に転じたのは、3年ぶりとなる。
支援策や報酬改定の影響、顕著に
支援策や報酬改定の影響、顕著にTSRのレポートにおける「老人福祉・介護事業」は、訪問介護事業、通所・短期入所介護事業、有料老人ホーム、その他の4区分。倒産の実態を提供サービス別にみると、前年までと同様、「訪問介護事業」が最多の47件(構成比58.0%)。前年比は16.0%減で、他のサービスに比較すると、減少率が小さかった。
これに次ぐ倒産件数となったのが、デイサービスなど「通所・短期入所介護事業」の17件。こちらは前年に比べ半減(55.2%減)している。

「老人福祉・介護事業」の倒産、休廃業・解散件数 年次推移
出所:東京商工リサーチ資料より作成
負債総額は128億8100万円(前年比8.0%減)と、2年連続で減少した。負債額別でみると、前年ゼロだった「負債50億円以上」の大型倒産が発生したものの、負債1億円未満が70件と約9割(構成比86.4%)を占める結果となった。従業員10名未満が73件(構成比90.1%)となり、経営基盤が脆弱な小規模・零細規模の事業者の比率が高まった。
コロナ倒産は増加
一方、倒産のうち、いわゆる「コロナ倒産」は通年で11件。前年の7件と比較すると、約6割(57.1%)増加した。訪問介護事業が3件(前年1件)、通所・短期入所介護が3件(前年6件)、有料老人ホームが2件(前年ゼロ)。介護事業者全体の倒産は、コロナ関連の資金繰り支援効果などで抑制されているものの、「支援効果も薄れ始めている」とTSRは分析している。