科学的介護情報システム「LIFE」のフィードバックが昨年から始まった。現状では、どのように活用すべきか分からない、という声も多い。社会福祉法人鈴鹿福祉会「鈴鹿グリーンホーム」(三重県鈴鹿市)は、データ同士の関連性や、その意味について考察。ケアの方向性の確認に活用している。
同法人は鈴鹿市で、特養、デイサービス、居宅介護支援事業所などを運営している。特養は、従前より職員にとって働きやすい環境づくりに努めてきた。特に、センサーやICT記録など、テクノロジーは積極的に取り入れている。
LIFEへは5月にデータを提出。6月にフィードバックがもたらされた。要介護度は、全国平均3.95に対してホームの平均は4.04と高かった。服部昭博施設長は、全国の平均介護度が想像より低かったことを意外に感じたという。「そのような疑問について、データをたどり、その理由を求めていきました」。
まず、データ中で全国平均とホームとで明らかな差が生じているものを探した。
様々なデータの中で、「認知症高齢者の日常生活自立度」の項目で、Ⅲb(夜間を中心に日常生活に支障をきたすような症状などが見られる)、Ⅳ(日常生活に支障をきたすような症状などが頻繁に見られる)の割合がそれぞれ、25%(全国平均14%)と45%(全国平均22%)となっていることが目に付いた。
そこで、認知症診断の有無についてのデータを見たところ、認知症「有り」の割合が75%(全国平均64%)であった。認知症者の割合の多さが介護度を押し上げていると考察した。
意思疎通の項目では、自分から挨拶、話しかける割合と、BIの合計点が全国平均より高かった。
これらは「認知症の割合は高いが行動心理症状は見られていない」ということを表していると服部施設長は考え、施設のケアの方針を、「基本的な認知症ケアの徹底」と定め、それを実施していった。

FB分析の過程
データの質影響
一方で、以前より力を入れて取り組んでいた栄養状態の改善では、「低栄養状態のリスクレベル」が高に該当する入居者が28%と全国平均(14%)を大きく上回っていた。
低栄養リスクは、必要栄養量、提供栄養量、食事摂取量、血清アルブミン値などに基づき算出される。そこで、全国平均とホームの必要栄養量などを比較したが、顕著な差はなく、低栄養リスクが比較的高いという結果と矛盾していた。
関連性読み解く
手がかりとなったのは「血清アルブミン値」の有無で、ホームではその数値を全員分取得していたのに対し、全国平均では、「データ有」と回答した施設が約半数にとどまった。
そこで、血清アルブミン値のデータを除いた状態で低栄養リスクを計算したところ、高の該当者は5%となり、全国平均を大幅に下回った。単純なデータの比較のみであったら、職員の取り組みが正当に評価されず、負担が増す可能性があった。
服部施設長は、「今後も、このようなデータ分析のポイント、活用方法などを、セミナーなど様々な場面で発信していきます」と語った。