オミクロン株の感染拡大が止まらず感染防止対策の徹底が叫ばれている一方で、重症化・死亡リスクが低いことから、過剰な対策による社会機能の麻痺への対応が大きな課題となっています。入所施設においても、従来のウイルスの侵入防止対策の徹底だけでは感染対策は機能しなくなり、職員・利用者の感染を前提とした対策にシフトする必要があります。
では、入所施設はどのように対応したら良いのでしょうか?
15のポイントにまとめてみました。
感染拡大への施設の対応は?
■1 施設施設職員自身の飛沫感染防止策の徹底
感染者が地域に溢れる状況ですから、行動の自粛や3密回避よりウイルス飛沫をブロックする対策にシフトして、効率的・効果的な感染防止策に切り替えます。
■2 3回目接種と未接種職員への接種徹底
職員はワクチン接種から経過期間が長く、感染予防効果が20%程度にまで低下しています。早期の3回目接種を徹底し、未接種職員へは接種を強く要請します。
■3 ワクチン未接種利用者への接種促進
収束移行期でも、未接種の利用者の感染時の重症化は大変重い課題になります。感染が防ぎ切れない現状を家族に伝え、未接種利用者を1人でも減らすようにします。
■4 濃厚接触による職員待機の回避
濃厚接触者となった職員数が増えれば施設運営が危機に瀕します。職員が感染者に接触した時、濃厚接触者かどうか正しく判断して極力待機を回避します。
■5 職員のブレイクスルー感染の早期発見
接種済みの職員が感染した時、早期に発見し、接触した利用者の対応が必要です。自治体の無料PCR検査・抗原検査などを活用し感染を早期に発見します。
■6 職員から利用者への感染防止策の徹底
職員が感染していた時、身体介護時の感染防止対策を徹底します。特に「顔が密接しない介助方法」は重要です。
■7 職員の陽性判明時の即時対応
「接触箇所の一斉消毒」「接触者の確認」「接触者のPCR検査・バイタルチェック」など、職員感染時の即時対応マニュアルに従って、感染拡大防止策を徹底します。
■8 ワクチン未接種利用者のSpO2管理
ワクチン未接種利用者は、感染した時の重症化リスクが接種者の約3倍ですから、いつ感染し突然重症化するか分かりません。SpO2管理を継続します。
■9 低湿度地域の加湿&水分摂取対策
居室やデイルームの加湿対策を徹底します。また、可能な利用者へは頻繁な水分補給を行い、気道内のウイルスブロック対策を行います。
■10 マスク選択・着用方法の再徹底
マスクの選択・着用方法で効果が大きく変わります。「不織布マスクの使用」「ノーズフィットによる密着」など、マスクの効果を活かせる着用方法を徹底します。
■11 重症化リスクの把握
ワクチン接種・未接種によって重症化リスクは異なりますし、基礎疾患によっても大きく異なります。利用者ごとのリスクを一覧表にして看護師が管理し、日常のケアの対応も変えます。
■12 感染者の施設外隔離の要請
地域の病床がひっ迫していると施設内療養が求められます。重症化リスクが高い利用者を優先的に、入院など施設外隔離を要請します。
■13 無症状・軽症利用者の施設内治療
施設内治療が決定した場合、医師の常時対応と感染管理認定看護師など院内感染対策専門家の派遣を要請、治療より感染拡大防止を優先します。
■14 感染者の常時SpO2管理
無症状・軽症でも突然の重症化は避けられません。平常時SpO2値から6低下したら、迅速に病院へ搬送します。
■15 「隠れCOPD」の利用者に注意
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の感染者の死亡率は通常の13.9倍ですが、95%の患者が未診断です。運動時の息切れ、慢性的な咳・痰・喘鳴がある利用者はCOPDかもしれません。
安全な介護 山田滋代表
早稲田大学法学部卒業と同時に現あいおいニッセイ同和損害保険株式会社入社。2000年4月より介護・福祉施設の経営企画・リスクマネジメント企画立案に携わる。2006年7月より現株式会社インターリスク総研、2013年4月よりあいおいニッセイ同和損保、同年5月退社。「現場主義・実践本意」山田滋の安全な介護セミナー「事例から学ぶ管理者の事故対応」「事例から学ぶ原因分析と再発防止策」などセミナー講師承ります。