2022年4月の診療報酬改定でリフィル処方箋がついに解禁された。米国に遅れること70年、英仏に遅れること20年近くで、ようやくわが国でも本格的にスタートする。
著者がリフィル処方箋に初めて出会ったのは、1980年代後半に臨床留学したニューヨークの病院外来だった。
米国では日本と違って患者は薬袋の代わりに医薬品ボトルを外来に持参する。そして空のボトルを出して「リフィル処方でお願い」と言う。患者によっては「クレストール(高脂血症薬)10㎎、90日分を4回リフィルで」という処方もある。つまり「90日を4回リフィル、すなわち360日処方をお願い」というわけだ。
年に1回は医師の診察を受けるが、あとは薬局で詰め替えをしてもらうだけで、その間、医師の診察は受けない。まるで1年に1回の七夕のような診察だと思った。
さて日本医師会は再診料が減ることから、リフィル処方箋には長らく反対の姿勢を崩さなかった。こうした中、2010年3月の「チーム医療の推進に関する検討会報告書」において、初めて医師と薬剤師のチーム医療推進の観点からリフィル処方箋が提案された。
そして12年後の昨年末の後藤茂之厚労相と鈴木俊一財務相の大臣折衝で、リフィル処方箋が今年4月の診療報酬改定において本格導入されることが決まった。さすがに日本医師会も、今回は財務省側のリフィル処方箋で診療報酬改定率の本体分0.1%減という方針には抵抗することはできなかった。
具体的にはリフィル処方箋では「リフィル可」欄にレ点を記入する。リフィル回数は上限3回までだ。リフィル1回当たり投薬期間と総投薬日数は医師が患者の病状を踏まえて個別に判断する。そしてリフィルの際は薬局で薬剤師が残薬確認や副作用確認を行う。
患者は薬を詰め替えてもらうだけで医師の診察は不要だ。これから花粉症のシーズン、まずは花粉症の薬からリフィル処方が続々と始まるだろう。
次なる主役はメールオーダー
さてリフィル処方箋の次に控えているのはメールオーダー処方箋だ。
米国では2000年から高齢化して薬を薬局に取りに行けなくなった在郷軍人に対して、メールオーダーで薬の宅配便を始めた。そしてその際、薬局の調剤業務を、オートピッキングを行う調剤工場に外部委託して調剤業務を効率化し、調剤料を安価にした。今では処方箋の2割ほどがメールオーダー処方に置き換わっている。
今年1月、規制改革推進会議医療・介護・感染症対策ワーキンググループでも調剤業務の外部委託の議論が始まった。わが国でもさらなる規制緩和でリフィルからメールオーダーへの流れを作りたいものだ。
武藤正樹氏(むとう まさき) 社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ相談役
1974年新潟大学医学部卒業、国立横浜病院にて外科医師として勤務。同病院在籍中86年~88年までニューヨーク州立大学家庭医療学科に留学。94年国立医療・病院管理研究所医療政策部長。95年国立長野病院副院長。2006年より国際医療福祉大学三田病院副院長・国際医療福祉大学大学院教授、国際医療福祉総合研究所長。政府委員等医療計画見直し等検討会座長(厚労省)、介護サービス質の評価のあり方に係わる検討委員会委員長(厚労省)、中医協調査専門組織・入院医療等の調査・評価分科会座長、規制改革推進会議医療介護WG専門委員(内閣府)