社会福祉法人青山会(熊本市)の特別養護老人ホームくわのみ荘(同)では、利用者と地域社会とのつながりの維持を目的に、売店の設置や、自家農園での野菜栽培などで、様々な人を施設に呼び込む工夫を行っている。

入居者のQOL向上に加え、深刻化する「高齢者の社会的なQOL向上」を防ぐことにもつながっている。

 

 

住民呼び込む仕掛けで

 

法人は市内で、特別養護老人ホームくわのみ荘(120床)を筆頭に、デイサービス、居宅介護支援事業所のほか、保育園などを運営している。

 

くわのみ荘は1973年に設立され、2004年の改装を機に全室個室化。以降ユニットケアを推進し、現在は一般社団法人日本ユニットケア推進センターが認定するユニットリーダー研修の実施施設となっている。

 

施設長でもある跡部尚子理事長は、自宅のような環境を目指して施設づくりを進めてきた。その中で、入居者の交流関係が「顔なじみ」だけに留まっている点に疑問を感じたという。「様々な人が出入し、空気を攪拌してもらうことが必要だと考えました」(跡部理事長)

 

 

跡部尚子理事長

 

 

売店、自家農園 交流きっかけに

 

まず、地域の子どもを呼び込むため施設内におもちゃ図書館を開設。また、交流ホールや地元の特産品、日用品、駄菓子などを扱う売店を設置した。

 

 

生活雑貨などを扱う売店や農園が地域住民との接点になっている

 

 

利用者数は月500人程度で、入居者や近所の小学生がよく利用する。売上は月に15~20万円ほど。

 

施設近隣には500㎡の自家農園を設けた。ここで職員に提供する食事などに使う野菜を栽培している。植え付け、収穫など人手が必要な時期には、職員やデイの利用者、事業所の保育園児が応援に駆け付け、皆で作業する。近隣には農家も多いことから、厚意で畑を耕してもらうこともあった。

 

 

農園での収穫の様子

 

人を呼び込む新たな仕組みとしては今後、ブックマンション(希望者に棚の一角を有料で貸し出すもの。そのコーナーは自分の店として本などを販売できる)コーナーを設ける予定だ。地域経済の循環に一役買うことが期待できる。

 

「施設に来る目的は沢山あっていいと思います。様々な人と接する緊張感が生活のハリとなり、入居者のQOLを向上させます。そして、これらには、職員が多様な経験を通じて人間的な厚みを増すことで、ケアの向上につなげる狙いもあります」(跡部理事長)

 

 

施設の交流ホール

 

 

コロナで孤立 つながる策を

 

くわのみ荘の取り組みは地域住民にとって、福祉の専門職と日常的に接する機会となっている。

 

現在、コロナ禍もあり、地域で孤立状態に陥っている高齢者や介護家族は少なくない。

 

昨年11月11日、公益社団法人認知症の人と家族の会と中央社会保障推進協議会、東京社会保障推進協議会は、介護の日の取り組みで「介護・認知症なんでも無料電話相談」を実施した。

21年は前年の約2倍の547件の相談を受けた。家族、知人との交流が制限され、相談する機会を失っていたことが伺える(表参照)。

 

 

孤立を防ぐためには、気軽に相談でき、必要となれば然るべき専門職へ容易につながる環境が必要だ。

 

くわのみ荘では、農園や地域住民向けの終活講座で知り合った人から相談があり、介護保険制度について理解が深められるよう支援を行ったり、サービス利用につながったりした事例がある。日頃からの何気ない交流がいざという時の支援の糸口になっている。

 

 

 

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