社会福祉法人蓬莱会(徳島県阿波市)では昨年から、スタッフの定着を促す目的で人事評価を体系化。キャリア開発シートを軸に人事評価を実施することで、スタッフが成長の道筋を立てやすくなるほか、評価の透明化により公平を担保している。
客観的な指標導入
等級は9段階で、1~3が「ジュニアクラス」、4~6が「スタンダードクラス」、7~9が「マネージメントクラス」と分類している。ジュニアクラスからスタートし、ユニットリーダーなどを担当するスタンダードクラス、管理職などのマネージメントクラス、とキャリアを重ねる。
キャリアデザインシートには、それぞれのクラスに期待する役割に基づき設定された「開発支援要素」が5項目ある。そして、それぞれの取り組み状況を5段階で評価する「キャリア開発基準」の欄が設けられている。1~5の評価に応じて採点し、5項目の点数の総計によって昇級などを決定する。
例としてジュニアクラスの評価では、「ミスのない仕事・仕事の正確さ」という開発支援要素がある。
評価対象期間におけるミスの頻度とその影響度を評価するもので、キャリア開発基準の評価1が「たびたびミスが発生。業務に大きな支障が生じた」、評価2が「軽微なミスはあるが大きな支障はなかった」、評価3が「軽微なミスはあるが再発防止策で繰り返さなかった」、評価4が「自己チェックを実施しており、許容できる程度のミスのみ」、評価5が「4の基準+仲間にやり方の指導をしていた」となっている。
1~5のどの段階に該当するか本人、上司が面談ですり合わせをした上で、10点満点で評価を行う。
スタッフの評価を行った後は、ユニットリーダーなどが参加する「調整会議」で、どのような評価を行ったのかオープンにする。これにより、「特定のスタッフの得点を高くする」といった評価のブレを修正する。
大塚小百合専務理事はこの制度の導入の目的について、「人事評価のブラックボックス化の是正を狙いました」と語る。

社会福祉法人蓬莱会
大塚小百合専務理事
マネジメント層 職員満足で評価
マネジメント層の評価は、スタッフを対象に実施する「ハピネス評価」というアンケート調査に基づく。
業務負担や労働時間、人間関係などを評価するもので、調査の結果が高ければ等級が上がる。専用のWEBサイトから回答する方式で、所要時間は5~10分程度だ。
この調査は組織の現状分析にも活用される。大塚専務理事が施設長を務める特養では働き方についての満足度が高く、これまでの職場環境改善の取り組みを継続することとした。一方で、キャリアアップについての意欲が低いという結果も出た。
大塚専務理事は、「役職者が忙しそうな姿を見て、『なりたくない』と思ってしまうのではないか」と考え、業務の見直しなどを進める方針とした。
今後も現場からの意見を取り入れながら、制度をブラッシュアップしていく。