業界の最大課題「人材確保」
2021年度介護報酬改定から24年同時改定への読み解きにつなげるため、今回は、5つの分野横断テーマ「④介護人材の確保・介護現場の革新」について論考します。
介護業界最大の課題である人材確保に向け、報酬改定においても様々な視点での見直しが行われました。改定には、3つのポイントがありました。
1つめは、「介護職員の処遇改善や職場環境の改善に向けた取組の推進」です。
処遇改善加算や特定処遇改善加算、特定事業所加算の見直しとともに、ハラスメント対策が義務付けられました。
その後も処遇改善については、今年の2月より新たに「介護職員処遇改善支援補助金」が創設され、さらなる改善措置が講じられており、24年改定では、3種類となる処遇改善関連加算の整理が求められています。
2つめは、「テクノロジーの活用や人員基準・運営基準の緩和を通じた業務効率化・業務負担軽減の推進」です。
今後の人口減少社会の中で、介護人材の確保のためには、サービス品質を落とすことなく生産性の向上を図り、より少ない人数で対応できるようテクノロジーを活用していくことが最重要テーマの1つです。
前回改定でも、居宅介護支援事業の逓減制の見直しや、特養などにおける見守り機器を活用した夜勤職員配置加算の人員要件の緩和、グループホームにおける夜勤職員体制の見直しなど、様々な見直しが行われました。いずれも軽微な見直しであり、24年改定において、どの程度踏み込んだ見直しとなるか注目されます。
とりわけ、今年に入り「規制改革推進会議」の場において、ロボットなどの活用に伴う施設の介護職員配置基準3対1の見直しについて意見提言がされました。
この件は複数回にわたって新聞報道されたことからも24年改定での見直しが期待されていますが、一方で、サービス品質の確保に問題がないのか?職員の負担増につながらないか?といった視点では検証すべきことも多く、議論は慎重に、緩やかに進んでいくことになると思います。
3つめは、「文書負担軽減や手続きの効率化による介護現場の業務負担軽減の推進」です。
コロナ禍の中、あらゆる分野でのDX化の推進や押印廃止の流れと同様、介護業界においても、オンライン会議や電子サインが認められ、紙管理であった膨大な書類や文書が、デジタルデータでの保管を認められるようになるなど、大きな改革の流れがつくられています。
以上のように前回改定で今後の改革に向けた方向性は示されており、24年改定でどこまで踏み込んだ改革へとつながるのかが今後大いに注目すべきポイントとなります。
斉藤正行氏 プロフィール
2000年3月、立命館大学卒業後、株式会社ベンチャーリンク入社。メディカル・ケア・サービス㈱の全国展開開始とあわせて2003年5月に同社入社。現在の運営管理体制、営業スキームを構築し、ビジネスモデルを確立。2005年8月、取締役運営事業本部長に就任。2010年7月㈱日本介護福祉グループ副社長に就任。2018年4月㈱ピースフリーケアグループ代表に就任。2018年6月、介護業界における横断的・全国的組織となる一般社団法人全国介護事業者連盟を結成。㈱日本介護ベンチャーコンサルティンググループの代表を務めている。