オミクロン株が猛威を振るう中、地方の友人たちからは東京は大丈夫か?と訊かれるのだが、節分にデパ地下で「恵方巻」を買う人々の長い行列を見る限り、都心部の人々の意識はもはや、ウイルスと共生の域に達し、ニューノーマル時代を生き始めている。

とはいえ、コロナ禍における国の政策からも見られるように、わが国は、他国に比べるとイノベーションが生まれづらい環境にあることは明らかである。国の財政政策だけでなく、実体経済の成長に必要な環境づくりが急がれる。

 

 

 

米国の医療・介護分野で最も気になるイノベーションは、世界60ヵ国でライドサービス、食料品の配達、自転車や電動キックボードのレンタルなどを展開するウーバーテクノロジーズから生まれている。

 

同社は、2019年秋から医療ビジネス部門のウーバー・ヘルスを開設した。その理由は、世界的な高齢化の問題を見据え、20年に65歳以上で運転が不可能になる1000万人超のうち、医療機関への移動が必要な72%に起きる事態に着目したからだ。

 

病院の予約を取りながら行かない人が、米国だけでも年間で360万人。これが1回あたり200ドルの病院の損失となっていた。

さらに、患者の機会損失も合わせると、年間損失額は1500億ドルと試算された。こうした事態に対応するため導入したサービスは、患者が病院に予約をすると、病院側がウーバーを手配して患者を迎えにいく仕組みだ。

 

同社は1月25日付のプレスリリースで、ウーバー・ヘルスの最高医療責任者チーフメディカルオフィサーに、老年医学を専門とする医師で、医療企業の幹部を務めた経験を持つマイケル・キャンター博士を招聘したと発表した。

医師でありながら経営にも明るいという、まさにアメリカの人材層の厚さ、イノベーションが生まれる地力を強く認識させる。

 

キャンター氏は、「治療後に患者が自立した暮らしを可能にする医療・介護システムの構築において、輸送サービスの活用がどれだけ重要かこの目で見てきた」とコメント。

同社は近年、医療保険会社や医療機関、ドラッグストア・チェーンとの提携を拡大してきており、約3000件を超える医療部門の顧客データを抱えている。

 

21年12月に開催された「フォーブス・ヘルスケア・サミット」においては、同社CEOを務めるダラ・コスロシャヒが、様々な医療保険のセキュリティに関する要件を満たし、「全てをオンデマンドで」提供するサービスを医療業界に持ち込む心算を示した。

全ての患者がウーバー・ヘルスのサービスを受けられるようインターフェースも考えられていて、患者はアプリをダウンロードしなくても携帯電話のSMSにメッセージが送られ、日常の一部として享受できる。

 

同社幹部がキャンター氏にかける期待は、これまでの豊富な知見が医療・介護において早急な対策を指摘される空白部分に活かされることであり、今後はデリバリーに止まらず、データに基づく、よりカスタマイズしたサービスへの長期ビジョンが創出されていくのだろう。

 

わが国こそ、課題先進国として医療・介護分野において独自のきめ細やかなサービスを提供できるリーディングカンパニーの要素を持ち合わせている。

 

今こそ、規制緩和による環境づくり、実体経済の成長への構想力と創造力が求められている。

 

 

 

 

小川陽子氏
日本医学ジャーナリスト協会 前副会長。国際医療福祉大学大学院医療福祉経営専攻医療福祉ジャーナリズム修士課程修了。同大学院水巻研究室にて医療ツーリズムの国内・外の動向を調査・取材にあたる。2002年、東京から熱海市へ移住。FM熱海湯河原「熱海市長本音トーク」番組などのパーソナリティ、番組審議員、熱海市長直轄観光戦略室委員、熱海市総合政策推進室アドバイザーを務め、熱海メディカルリゾート構想の提案。その後、湖山医療福祉グループ企画広報顧問、医療ジャーナリスト、医療映画エセイストとして活動。2019年より読売新聞の医療・介護・健康情報サイト「yomiDr.」で映画コラムの連載がスタート。主な著書・編著:『病院のブランド力』「医療新生」など。

 

 

 

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