施設は配置医師との打ち合わせを

 

ある特養で利用者がコロナ感染しクラスターとなりました。職員16名、利用者37名の感染が判明しました。

保健所の指示で市医師会のクラスター対策班から医師が派遣され、中和抗体薬ゼビュディ(30名)と経口治療薬ラゲブリオ(3名)を投与したため、全ての利用者が軽症で推移し死亡者も出ませんでした。「迅速な対応で重症化を防げた」と施設長は話します。

 

施設ではクラスターに備えてどのような対応をすれば良いのでしょうか?

 

 

 

■クラスター対策の確認
1月10日~2月6日の間に、全国で742件の高齢者施設におけるクラスターが発生しています。高齢者施設の感染対策は感染者の発生を前提とした、重症化防止対策に重点を置かなければなりません。

 

そこで最も大切なことは、感染者の早期発見と重症化防止治療です。感染者の発見が遅れれば新型コロナ治療薬の投与が難しくなります。治療薬の投与には様々な制限がありますから、周到な準備が必要となるのです。

 

まず、感染者の早期発見のためには、次のことを徹底しなくてはなりません。

 

①定期PCR検査など職員の感染を早期に発見する対策を行う
②職員の感染判明と同時に保健所に連絡し利用者へのPCR検査を行う
③陽性と判明した利用者に対し検温とSPO2測定を頻繁に行う
④施設協力医師と協力して、軽症者に重症化防止のための治療薬の投与を迅速に行う

 

 

■本事例で使用された重症化防止治療薬
本事例で使用された治療薬は中和抗体薬ゼビュディと経口治療薬ラゲブリオです。なぜ2種類の治療薬が投与されたのでしょうか?なぜ、ゼビュディを多くの利用者に投与したのでしょうか?投与した医師に聞いてみると、次のような理由からでした。

 

▽ゼビュディの重症化抑制効果は85%とラゲブリオの30%に比して格段に高い
▽発症から投与までの期間がゼビュディは7日とラゲブリオの5日に比べ余裕がある
▽ゼビュディは点滴1回の投与でありラゲブリオの5日間に比して投与期間が短い
▽医師が「ゼビュディ登録センター」に登録済みであり薬剤の入手が迅速にできた

 

以上のように2つの治療薬には効果や投与方法、薬剤の入手方法に違いがあります。重症化抑制率、発症からの投薬への日数制限、認知症利用者への投与のしやすさなどを勘案して、医師がゼビュディを多く使用したのです。

 

 

■施設の配置医師との事前の打ち合わせを
本事例では、尼崎市医師会の医師が適切な治療薬を選び迅速に投与を行ったため、大きなクラスターであるにもかかわらず死亡者が出ませんでした。

 

しかし、どの自治体でもクラスター対策班の医師が駆けつけてくれる訳ではありません。施設は、クラスターが発生した時の治療対策について、次のような内容で施設の配置医師と事前に打ち合わせをしておく必要があります。

 

 

①投与する治療薬の種類
現在軽症者に投与できる新型コロナ治療薬は次の4種類ありますが、効果、投与方法、入手方法などを勘案して投与する薬剤の優先順位を決めておく。(効果は重症化抑制効果)

 

②入手方法の確認など投与の準備
経口治療薬は医師が処方し薬局で入手可能ですが、点滴治療薬は医師の登録が必要になりますから、配置医師が事前に登録しなければなりません。また、パキロビッドは併用禁忌薬が多く、その中には認知症の利用者が服用している向精神薬がたくさんありますから事前確認が必要です。

 

 

安全な介護 山田滋代表
早稲田大学法学部卒業と同時に現あいおいニッセイ同和損害保険株式会社入社。2000年4月より介護・福祉施設の経営企画・リスクマネジメント企画立案に携わる。2006年7月より現株式会社インターリスク総研、2013年4月よりあいおいニッセイ同和損保、同年5月退社。「現場主義・実践本意」山田滋の安全な介護セミナー「事例から学ぶ管理者の事故対応」「事例から学ぶ原因分析と再発防止策」など

 

 

 

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