田辺薬品(東京都府中市)は調剤薬局などを11店舗運営している。地域住民の健康づくりに力を入れており、2020年にはそれを支援する拠点として、「薬局ランタン」を開設した。薬剤師の対人業務を充実させ、かかりつけ薬局として選ばれる存在を目指す。

 

 

 

厚生労働省の「令和2年度衛生行政報告例」によると、20年度末時点における薬局数は全国で6万951施設となっている。日本のコンビニエンスストアの店舗数約5万6000店舗を上回る。

 

22年4月の診療報酬改定においては、リフィル処方箋の導入が決まった。これは、1枚の処方箋を最大3回まで利用できる制度だ。患者は診察を受けなくても、自分が決めた薬局で薬をもらえるようになる。

現在薬局は、患者の選択の自由度が増した分、「かかりつけ薬局として選んでもらえる」ために変化が必要であると言える。

 

田辺薬品の創立は、1937年に遡る。52年に府中に店舗を構えて以来、東京西部で事業を展開している。2年前に、田辺正道社長が現職に就いた。その際、従業員にどのような法人を目指すかヒアリングを実施。「その結果を受けて、『医薬品を渡すだけではない薬局』を目指すこととなりました」と語る。

 

田辺薬品田辺正道社長

 

 

対物業務については、電子薬歴や自動分包機の導入によって薬剤師の業務を効率化し、対人業務に振り向ける時間を確保。在宅療養患者への訪問に力を注ぐ。

 

特に患者や家族、医師とのコミュニケーションは積極的に行っている。関係者間での話し合いで薬が見直され、QOL向上に成功したケースも多い。「数値の上で正常でも、本人の主観的な健康は異なります」と田辺社長は語る。数値データだけでなく、薬剤師と患者の対面コミュニケーションから得た非言語の兆候を見つけ、関係者間で共有していくことで、より良い処方へとつなげる。

 

 

住民参加の店舗 各地域で展開へ

 

同時に、「地域住民の健康づくり」に取り組んだ。その一環で、従来の店舗とは異なるコンセプトの薬局ランタンを開設。

 

外観は街並みに馴染む外観

 

 

保険調剤薬局としての機能に加えて、地元の野菜や自然食品を販売する(写真参照)点が特徴だ。特に店先に並ぶ野菜は地場産で、新鮮さが売りだ。

 

店先で新鮮な地元野菜を販売

 

 

自然食品は「脂肪が気になる」「食生活改善に」「ダイエットサポート」といった具合に分類。ポップを配置し、分かりやすさや、見て手に取って選ぶ楽しみを感じられるよう意識した。

 

 

店内には自然食品を取り揃えている

 

 

また店内に、カゴメ(同中央区)が提供する「ベジチェック(専用のセンサーに手を乗せると野菜摂取量の充足度を判定するもの)」の配置。健康情報の発信などを通じ、来店者が健康について考えるきっかけを用意している。

 

 

カゴメの「ベジチェック」は自身の健康について考えるきっかけになる

 

 

「薬局には処方箋を持っていないと入れないというイメージがあると思います。一方で、この店舗は八百屋感覚で利用される人も多くいます」(田辺社長)。薬局ランタンでは薬剤師が身近な医療の専門職として相談に乗る。

 

法人ではこの様な健康増進や疾患予防に寄与する薬局を、「ヘルスケア薬局」と位置付け、他店舗へ展開していく方針だ。店舗の作りなどについては、それぞれに所属する職員の長所や地域性なども加味して決める。

住民との座談会も開催しており、その中で地域ニーズをヒアリングしていく。「住民も主体となって薬局づくりに関わってもらいます。それにより、身体的な面だけでなく、社会的な活動の促進も合わせて、健康の維持に貢献したいと思います」(田辺社長)。

 

 

今後は、24年までに店舗数を16店舗に拡大。売上は約6億円増の16億円を目指すという。

 

 

「八百屋のような感覚で利用する人も多い」と田辺社長。この日は東京都小平産のネギを入荷した

 

 

 

 

 

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