群馬県を中心にデイサービス10事業所などを運営するエムダブルエス日高(高崎市)。同社は開発したナビシステム「福祉Mover」を活用し、デイの送迎車を利用した〝交通弱者〞のための相乗りサービスを2019年より行う。
他法人やタクシー会社とも連携した地域の「第3の交通網」を目指し、実証実験を経て有効性を確認。現在は来年度の実現化に向けて調整を進めている。

地域の『第3の交通網』を目指し、ネットワークを構築中
同社はかねてより手作業での送迎表作成や送迎車の空席に課題を感じていたことから、効率的な送迎ルートをAIが提案する「福祉Mover」を2013年に開発。送迎業務の効率化を図った。
さらにこのシステムに配車マッチングシステムを組み合わせることで、送迎車の空席を「相乗り」に活用するサービスを19年から実施している。
相乗り対象者はデイ利用者としており、利用日以外にも活用できる。利用者は、スマートフォンの専用アプリを通じて自宅含む目的地5ヵ所を事前登録する。利用者がアプリもしくは電話で目的地と利用人数を伝達すると、福祉Moverが送迎車を選定し、ルートを提案。これをドライバー側に通知する。
北嶋史誉社長は「自社だけでなく他法人にも福祉Moverを活用してもらい、相乗りサービスを地域の『第3の交通網』としたい」と語る。

エムダブルエス日高
北嶋史誉社長
その取り組みとして、20年10月から21年2月には、経済産業省の補助を受けて実証実験を行った。12法人25施設・送迎車222台が参加。デイ利用者のほか、地域の高齢者も利用し、アプリ登録者数は右肩上がりで約350名に増えた。
「まずは第1段階として送迎の効率化を図ってもらうために福祉Moverの普及を進める。第2段階である相乗りサービスの実現の目途が立ち次第、すぐに法人同士で共同運用できるよう福祉Moverのネットワークを構築していく」(北嶋社長)
現段階では同社のみが相乗りサービスを継続しているが、今後は他法人も含めたサービスの実現化を目指し、実証を踏まえて行政や自治体と調整中。前橋市では補助事業(21年10月から22年3月まで)により10法人・17施設・送迎車約100台が福祉Moverを既に導入している。
現在、サービス利用料の有料化に向けて、北嶋社長が設立した一般社団法人ソーシャルアクション機構では利用者とデイの間に立ったマッチングサービスなど、新たなビジネスモデルを検討。また、デイの運営時間外はタクシー会社が福祉Moverを通じて利用者を獲得するシステムや、デイの送迎業務をタクシー会社に委託する体制も考案中だ。
「実現化には、タクシー会社と連携してお互いにWin-Winなサービスを目指すことが鍵。介護事業だけにとどまらず町づくり・地域活性化に貢献することで、介護事業者の存在価値を高めていきたい」(北嶋社長)

車椅子の利用者も相乗り可能