前回に続き、介護職員処遇改善支援補助金と新加算の違いについて解説します。

今回は、臨時の報酬改定に伴う新加算(既存の処遇改善加算、特定処遇改善加算に〝別枠の加算〟)の取得要件や申請手続などについて紹介します。

 

趣旨:補助金と同じだが、給付で対応
時期:臨時の報酬改定が実施される10月より
取得要件:時期的な規定以外は、補助金と同じ
○既存の処遇改善加算の(I)から(Ⅲ)のいずれかを取得していることが要件
○処遇改善加算を取得できない訪問看護、訪問リハ、福祉用具貸与・販売、居宅療養管理指導、居宅介護支援は対象外
○加算額の3分の2以上を介護職員らのベースアップ(基本給、または毎月決まって支払われる手当)の引き上げに使わなければならない
○介護職員およびその他の職員も、賃上げ額の3分の2以上をベースアップに充てなければならない
対象職種:補助金と同じ
加算額:介護職員数に応じてサービスごとに設定された加算率を、各事業所の報酬(既存の処遇改善加算、特定処遇改善加算の分を除く)に乗じた額
申請方法:時期的な規定以外は補助金と同じ
報告方法:補助金と同じ

 

 

◆ ◆ ◆

 

介護職員処遇改善加算・特定処遇改善加算は、どちらも介護職の給与アップを図るために、通常の介護報酬に上乗せして支払われる加算制度です。

介護職員処遇改善加算は、平成23年度まで実施されていた福祉・介護人材の処遇改善事業における助成金による賃金改善の効果を継続する観点から、平成24年度から当該助成金を円滑に障害福祉サービス等報酬に移行し、当該助成金の対象であった障害福祉サービス等に従事する福祉・介護職員の賃金改善に充当されることを目的に創設されました。

 

また、平成30年の介護報酬改定等において、処遇改善加算に加え、経験・技能のある介護職員に重点化しつつ、一定程度ほかの職種の処遇改善も行うことができる介護職員等特定処遇改善加算が創設されました。

 

この2つの加算の大きな違いは対象職種の違いです。介護職員処遇改善加算は介護職員全般を対象としているのに対し、特定処遇改善加算は主に勤続年数が長く、経験や技能に優れた職員を対象にしており、事業者の裁量により、(A)経験と技能に優れた介護福祉士(B)その他の介護職員(C)それ以外のスタッフへの配分も可能で、CよりBが、BよりAの配分を上回ること、その際CはBの2分の1を上回らないことが要件となっています。

 

令和3年介護報酬改定では、特定処遇改善加算の配分ルールが緩和され、より多くの事業者が加算を取得しやすいようになりました。その一方、処遇改善加算・特定処遇改善加算ともに職場環境等要件が厳格化され、毎年度で取り組むべき内容が示されました。

 

 

◆ ◆ ◆

 

研修等の実施で新加算体制に備え

 

厚生労働省から示されている『令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要』で、給与の引き上げ以外の処遇改善状況をみると、資質の向上では、「介護福祉士取得を目指す者に対する実務者研修等の受講支援」の実施率が高くなっています。

労働環境・処遇の改善では、「ミーティング等による職場内コミュニケーションの円滑化による個々の介護職員の気づきを踏まえた勤務環境やケア内容の改善」や「健康診断・こころの健康等の健康管理面の強化、職員休憩室・分煙スペース等の整備」の実施率が高くなっています。

 

介護職員の介護職員処遇改善加算の取得要件として設定された基準の「キャリアパス要件」では、「資質向上のための計画に沿って、研修機会の提供又は技術指導等を実施するとともに、介護職員の能力評価を行う」旨も記載をされています。

 

コロナ禍においても介護職員等が不安にならないように、算定要件を満たすためでなくコミュニケーションを兼ねた研修を実施し、10月からの新加算の体制に備えて下さい。

 

 

 

伊藤亜記氏
㈱ねこの手 代表

介護コンサルタント。短大卒業後、出版会社へ入社。祖父母の介護と看取りの経験を機に98年、介護福祉士を取得。以後、老人保健施設で介護職を経験し、ケアハウスで介護相談員兼施設長代行、大手介護関連会社の支店長を経て、「ねこの手」を設立。

 

 

 

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