少子高齢化により学校の統廃合が進んでいる。その跡地は高齢者福祉施設やコミュニティの拠点など、地域住民のニーズに応じて様々に活用されている。

東京都西東京市では今年2月、廃校となった泉小学校跡地に医療法人順洋会(東京都清瀬市)らが運営する医療複合施設「LIFE MEDICAL CARE いずみ」が竣工。4月から本格的に稼働する。住民の健康づくりから看取りまで、ロングタームなケアを提供する拠点となっている。

 

在宅支援機能も

 

同施設は、▽クリニック(内科・小児科・整形外科)▽順洋会の在宅医療部本部と地域医療連携室▽訪問看護リハビリテーション・訪問介護ステーション▽カルチャー教室や総合事業などで利用する地域交流室▽トレーニングスタジオ▽社会福祉士などの専門職による相談会が実施されるカフェ▽ホスピス住宅(定員7名)▽犬の教育、交流の場、などが集まったもの。

 

そのうち、クリニック、在宅医療部本部、地域医療連携室は順洋会が運営。訪問看護・リハ・介護事業所とトレーニングスタジオ、カフェ、ホスピス住宅は順洋会グループ法人のSAKURA PARTNERS(同)、犬の交流施設は犬のレッスンなどを行うPOOCH PAL(同新宿区)という法人が運営している。

 

施設はコンクリート打ち放しのモダンな外観。写真の人物は櫻井英里子本部長(中央左)と唐木香子事務長(中央右)

 

 

医療、福祉施設として、健康な時から看取りまで、人生の様々な段階に対応。ロングタームなケアを提供する点が特徴だ。例として高齢者は、元気な時はトレーニングスタジオやカフェ、地域交流室などを利用しながら介護予防。身体が衰えてきたら、在宅医療や訪問系のサービスを利用しながら在宅生活を継続し、住み慣れた場所で最期まで暮すことができる。

 

終末期にさしかかり、自宅での暮らしが困難になるケースもある。その場合に支えとなるのがホスピス住宅だ。料金は月額35万円で、見守りや掃除洗濯など各種生活支援サービスを提供。外付けの医療、介護保険サービスを使用しながら生活する。このホスピス住宅では、入居者は社会とのつながりを感じながら安心して暮らすことができる。

 

「介護保険の入居型の施設などでは、どうしても生活上の制約があります。それを無くし、その人らしい生活を担保するために、施設でも自宅でもない、ホスピス住宅という形になりました」(唐木香子在宅診療部事務長)

 

地域向けに開放されるトレーニングスタジオ

 

 

動物介在活動で健康の増進図る

 

地域住民の健康づくりや、入居者のQOL向上に貢献するのが、「犬」の存在だ。

 

順洋会では、高齢者の心のケアの一環で、ドッグセラピーなどを実施してきた。今回は、犬とその飼い主のための施設「犬のじどうかん POOCH PAL」を設けた。

ここでは、犬とその飼い主の交流の場であり、社会的なルールを学ぶ教育も行っている。「目標は『社会犬』の育成です」と法人管理本部の櫻井英里子本部長。

 

犬はルールやマナーを学び、街で人間と共生する能力を身に付ける。そして、地域見守りやホスピス住宅などでのアニマルセラピー活動を通じ、地域に貢献することを目指す。

 

「犬のじどうかん」は、犬と飼い主の学びの場となっている

 

 

「泉小学校を廃止する話しが持ち上がった時、住民から『ここは残してほしい』という声があったそうです。それだけ、地域で愛されていたことが分かります」と櫻井本部長は語る。

 

住民に親しまれていた小学校跡地を利用するに当たって、「多世代が集う場所」という小学校の機能を引き継ぐことで、社会に開かれたホスピス住宅を実現することを考案。そして、現在の形に至った。

 

地域の子どもにとっては、高齢者をはじめ様々な大人と触れ合うことができるこの施設は、学校同様の学びの場となる。

 

 

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