制度の安定性に「評価の適正化・重点化」
令和3年度介護報酬改定から24年同時改定への読み解きに繋げていくために、今回は、5つの分野横断テーマ『⑤制度の安定性・持続可能性の確保』について論考していきたいと思います。
このテーマは我々、介護事業者にとっては決してありがたい話ではなく、高齢者が増加し続け、現役世代が減少していく人口構造の中で、介護保険制度を安定的に持続可能にしていくためには、介護報酬の適正化・抑制を進めていかないといけないという報酬削減のテーマとなります。
前回改定はコロナ禍での介護事業者に対する経営影響が考慮されて、プラスへの0.7%の改定率となりましたので、ほとんどの介護サービス種別において基本報酬単位がプラスとなりました。従って、この報酬削減に繋がるテーマについては限定的な見直しとなっています。
しかしながら、次なる2024年改定は診療報酬・介護報酬の同時改定となり、コロナ禍の一定の収束を迎えた後の改定となる可能性が高いことから、マイナス改定の可能性も秘めており、次回改定では制度の安定性・持続可能性の確保が重要なテーマの1つとなることが予測されます。その次回改定に繋がる読み解きとして、前回改定の中身を確認していきたいと思います。
改定のポイントは2つです。
1つ目は「評価の適正化・重点化」であり、いくつかの見直しが行われましたが、注目すべき項目には例えば、集合住宅における同一建物等減算適用時の区分支給限度額に関する取扱いがあり、通所系サービスや多機能系サービスにおいても訪問系サービスと同様のルールが適用されることとなり、区分支給限度額における利用回数が制限されることとなりました。
その他にも、訪問介護における生活援助の訪問回数に対するチェック体制の強化や、集合住宅に対するケアプランのチェック体制の強化なども行われ、次回改定においても引き続き、集合住宅に関する規制強化は大きなテーマの1つとなることが予測されています。
また、訪問看護における理学療法士等のサービス単位数がマイナスとなりました。当初の議論では、理学療法士等の配置基準の抜本的な見直しも問題提起されておりましたので、次回改定においても間違いなく、この問題は継続して議論されることは間違いないと思います。
2つ目のポイントは、「報酬体系の簡素化」であり、療養通所介護の報酬体系が包括払い体系となりました。次回改定においても包括払いの議論がどこまで加速していくかも1つのテーマとなることと思います。
斉藤正行氏 プロフィール
2000年3月、立命館大学卒業後、株式会社ベンチャーリンク入社。メディカル・ケア・サービス㈱の全国展開開始とあわせて2003年5月に同社入社。現在の運営管理体制、営業スキームを構築し、ビジネスモデルを確立。2005年8月、取締役運営事業本部長に就任。2010年7月㈱日本介護福祉グループ副社長に就任。2018年4月㈱ピースフリーケアグループ代表に就任。2018年6月、介護業界における横断的・全国的組織となる一般社団法人全国介護事業者連盟を結成。㈱日本介護ベンチャーコンサルティンググループの代表を務めている。