夜の10時に母からの電話。最近は両親から電話があるとまず、「何だろう?何かあったのだろうか」と出る時に一抹の不安を感じる。

受話器を取って、「もしもし」と呼びかけても、もぞもぞと聞こえてくるだけで、こちらの呼びかけに答える様子はない。折り返すも呼び出し音が鳴るだけで留守電に切り替わる。

 

ある時、母は父に内緒で自室にカギをかけた。誰も自分の部屋に入らないように部屋を出るたびにカギをかけているらしい。

 

母は数年前に軽い脳梗塞を発症した時に、その症状を看護師の妹子(いもこ・私は友人間で妹のことを妹子と呼んでいる)に相談し自ら病院に受診している。その時に処方された薬を飲んでも何の変化もないと意に介さず今日まで服薬していない。

 

だが2年前に階段から滑り落ち緊急搬送された。本人曰くその時の様子を「誰かに後ろから押された。お父さんが最近仲良くしている近所の人がいて、その人が私の背中を押したのよ」と何とも不可解なことを言う。

 

気持ちを切り替えてもらえるよう、馴染みのあることをお願いしてみた。

 

 

馴染みのあるお願いをする

 

昔から洋裁が得意で、幼少の私たち姉妹の洋服は全て母の創作であった。仕事を始めてからは、舞台の楽屋マット、化粧前のカバー、楽屋着は全て母の手作りで今でも大切に保管している。

 

そんな母の器用さを生かしてカーテンの作成を頼んでみた。

すると「ミシンをお父さんが捨てちゃったのよ。どこを探してもないのよ。お父さんがどこかに持って行ったのよ」と、不可解な発言…。父に近所の方でうちに来る方がいるのか、ミシンのありかは?と聞いてみるともちろん、近所の人との外での付き合いはあっても最近はおもてなしが大変なので家まで来ることはない。ミシンのありかなど自分は知らないとの答えが返ってきた。

 

母に「ミシンは自室の押し入れにでもあるのでは? 一緒に探す?」と声をかけると「今はいいわよ」と断られる。

 

弟の話では実は母の自室はゴミの山らしい。自室以外の父との共有部分は整然と整っているというより、まあ生活感ある感じで、私が見た感じは問題ない。が自室は足の踏み場がなく、どこで寝ているのかと心配になると漏らす弟がいた。

 

さてさて、なにが起きているのか…。日に日に家族介護に直面する私がいる。

 

 

 

女優・介護士 北原佐和子氏

1964年3月19日埼玉生まれ。
1982年歌手としてデビュー。その後、映画・ドラマ・舞台を中心に活動。その傍ら、介護に興味を持ち、2005年にヘルパー2級資格を取得、福祉現場を12年余り経験。14年に介護福祉士、16年にはケアマネジャー取得。「いのちと心の朗読会」を小中学校や病院などで開催している。著書に「女優が実践した魔法の声掛け」

 

 

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