旭化成ホームズ(東京都千代田区)は4月より、シニア向け賃貸住宅「ヘーベルVillage」において入居者の健康寿命延伸を図る新サービスをスタート。入居者の実態調査の結果に基づき、運動、食事、交流の3つの要素を支援するものとなっている。
へーベルVillage入居者の平均年齢は79歳で、要介護認定を受けていない人が85%を占める。
新たなサービスである「安心・安全・健康長寿応援メソッド」は、①入居者同士の交流を促すコミュニティラウンジの設計②健康長寿視点での面談③交流を促す仕掛けづくり、で健康寿命を延伸する。
①③では、ラウンジでゆっくり立ち話ができるように2~3人が座れるソファの設置、デジタルサイネージで入居者が投稿した写真を映す「写真館」、バーチャル旅行など会話のきっかけとなるコンテンツを配信する。
②では、相談員の面談内容をアップデート。従来は困りごとの相談や事故予防などについて相談を受けていた。今回からは、健康寿命の延伸に向けて、積極的に働きかけるようになった。

交流を促す仕掛けを設置した
適切な働きかけを行うために、入居者と相談員のコミュニケーションツール「イキイキ!応援シート」を導入。東京都健康長寿医療センター研究所と共同開発したものだ。
これは、運動、食事、交流の観点で、「1日にどれくらい歩くか」「何を楽しみに生活しているか」などヒアリング内容をまとめたもの。どの相談員でも適切な面談の実施が可能になる。
相談員が記入し、生活上のアドバイスを付け加えて入居者に渡す。健康長寿延伸に向けた意識付けと、目標設定による生活の「ハリ」を生み出すことが狙いだ。
シニア事業推進部介護事業企画課の中村亜希チーフは、「ヘーベルVillageで元気な暮らしを続けられれば本人の幸福につながるだけでなく、経営面でも居住年数の延長による賃料収入増など良い影響があります」と語る。

シニア事業推進部介護事業企画課
中村亜希チーフ
本人の生活意欲 相談員が後押し
新サービスは、同社のシニアライフ研究所が2019~21年の期間で入居者159名を対象とした、健康度と暮らしの実態調査に基づく。
入居者を健常、プレフレイル、フレイル群に分け、調査を行った。身体機能が低下するにつれ、外出頻度、食欲、友人との交流の減少がみられた。しかし、機能低下がある群でも、毎日1回以上の外出、10品目以上の食品摂取などは維持されていることが分かった。
加えてケーススタディでは、機能低下を補うように、体操や散歩、外部の食事サービスの利用などで、健康度を維持しようとする積極的な行動が見られた。夫婦や入居者間のつながりが、それを引き出していること、それぞれが関連し合っていることも明らかになった。
「このような積極的な行動の後押しが要介護状態への移行を防ぐ鍵だと捉え、サービスの提供に至りました」(中村チーフ)
今後、新サービス導入の効果検証を行い、今年度中に結果のまとめを公表する予定だ。