神戸市では昨年度、介護現場へのテクノロジー導入を支援する「神戸市 介護テクノロジー導入促進プロジェクト」に取り組んだ。導入に課題を抱える介護事業者と、テクノロジー関連企業の橋渡しをすることで、より良い現場作り・機器開発の機会を創出する。

 

プロジェクトを担当する神戸市の福祉局介護保険課・介護人材担当係長・中島由紀子氏と、プロジェクトの運営を受託する一般社団法人日本ノーリフト協会の保田淳子代表理事に話を聞いた。

 

神戸市 福祉局介護保険課
介護人材担当係長
中島由紀子氏

一般社団法人日本ノーリフト協会
代表理事 保田淳子氏

 

 

 

 

 

 

 

伴走型で橋渡し

 

――プロジェクトの具体的な内容は
中島 大きく分けて3つ、介護事業者や開発企業からの相談に応える「相談窓口」、テクノロジー機器を貸し出す機会を提供する「機器の体験導入」、プロジェクトの知見をセミナーで紹介する「支援イベント」です。

 

これらを無料で実施しました(下図)。「機器の体験導入」については10施設を選出して3回のワークショップと機器の貸し出しを行いました。うち3施設では伴走型コンサルテーションを6ヵ月実施しました。

 

 

実施したスケジュール

 

保田 主な目的は、人材不足の解消・職場環境の改善です。介護事業者はどのように導入を進めたら良いかわからず、一方企業は介護事業者の真のニーズがわからないものです。第三者として橋渡し役を担い、導入のサポートを行っていきました。

 

――「機器の体験導入」に参加した施設・企業は
中島 「多くの施設のモデルとなってほしい」という目的があり、特養や老健、有老、デイなど様々な形態の介護事業者を対象としました。テクノロジー関連企業は70社以上集まり、見守りセンサー、排泄支援機器など約80製品が対象となりました。

 

 

施設とメーカーをマッチング

 

――どのように体験導入のサポートをしたのでしょうか
保田 ▽施設ごとに課題を明確化▽体験・導入したい機器をヒアリング▽製品の紹介シートを配布▽ワークショップ時に体験▽導入計画書を作成▽企業とマッチングし、貸し出し体験――という流れです。

 

さらに伴走型コンサルテーションでは、施設に訪問し、導入計画を練った上で業務フローのすり合わせや定着に向けた環境整備、事例検討なども行いました。

 

 

――「どの機器を導入すべきかわからない」という介護事業者は多いと思います
保田 機器の選定の前に、まず第1ステップである「課題の明確化」が重要です。ワークショップにおいては、管理者と職員で施設の課題について意見交換する機会を設けました。

 

中島 「管理者は積極的に導入したいと思っているが、職員は研修時間の確保などに懸念があり抵抗感がある」など意識に乖離がみられました。第三者が介入したからこそ、課題のすり合わせができ、それに合った機器の選定につなげられました。

 

 

ワークショップの様子

 

 

モデル構築、普及へ

 

――導入後、機器をきちんと活用するには何が重要でしょうか
保田 「どうして機器を導入するか」を職員全体にしっかり共有することです。そのためには具体的な到達目標・イメージを持つことが必要です。

 

プロジェクトでは「どんな施設にしたいか」「“質の高いケア”とは具体的に何か」と深堀りする中で、目標を明確にしていきました。

 

中島 例えば、「1人介助による安全な移乗について知る」「腰痛発生率の減少」など具体的な目標を掲げる施設もありました。いくつかの目標の中で優先順位をつけることも重要です。

 

 

――体験してみて、導入を決めたケース、現場に適さなかったケースを教えてください
保田 業務の負担軽減度、企業側の対応など5項目を10段階で評価してもらい、管理者と職員で求めていたものが一致すると判断した場合、導入を決断されています。

 

全施設で計30機器以上を貸し出し、うち約20機器が導入に至りました。一方で、「使用環境に合わなかった」「使いたい対象者に当てはまらなかった」といった理由で導入に至らないケースもありました。

 

 

――現場のリアルな声は企業側にとって貴重となりますね
保田 コロナ禍で企業は施設に入れない状況ですので、プロジェクトをチャンスと捉えていただいたようです。

 

「移乗支援機器で内出血のリスクがある」「見守り機器は居室全体が管理できると思っていたが、ベッド周りしか見られない」など、購入となると、機器の改良や使用方法の再検討が必要となる意見も施設側から挙がりました。

 

中島 1つの機器が全施設同じように使用されるとは限りません。実際に「体験をする」機会を設けることが、企業側・施設側の双方にメリットがあり、導入後の最大限の活用につながると考えています。

 

 

――プロジェクトを踏まえた、今後の予定は
中島 今年度もプロジェクトを実施し、機器導入による効果測定に注力していきます。「どのくらいの工数や時間を削減できたか」といった神戸市独自の基本的な指標を作り、より多くの施設へ横展開ができるよう取り組んでいきます。

 

保田 現在、一般的には課題解決のためにより多くの機器を「体験し、経験値を増やす」という部分が抜け落ちていると思います。本プロジェクトのように「体験」の機会が広がり、自分の施設でも導入可能であると実感できる場が増えてほしいと思います。

 

 

 

 

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