有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などを全国に展開するさわやか倶楽部(北九州市)は3月、介護付有老「さわやか横浜栄館」(横浜市)を開設した。同施設では見守りシステムを始めとしたIT機器を積極活用している。石本将宏運営部長に話を聞いた。

石本将宏運営部長
利用者のQOL向上目指す
――施設について。
石本 全67床の介護付有老です。サークル活動や地域連携などに注力していますが、中でもIT機器を先行導入する施設として取り組みを行っています。
――どのようなIT機器を使用しているのか。
石本 積水化学工業(大阪市)の見守りセンサー「ANSIEL(以下・アンシエル)」を全室導入しています。また、九州工業大学発のスタートアップ企業であるオートケア(北九州市)の介護自動記録AIアプリ「FonLog」(フォンログ)や、服薬管理システムなどを使用しています。

見守りシステム「アンシエル」などを使用
――導入の狙いは。
石本 介護業務の負担軽減にどれだけ貢献できるかにこだわっています。
例えばアンシエルでは、「起き上がり」を検知して通知があるため、「立ち上がり」の通知があってから駆けつけた場合では転倒事故を防げなかった利用者に対しても間に合います。また、寝返りも検知するため、「そろそろ起きそうだから確認しよう」といった判断に寄与します。
そのほかにも介護自動記録アプリを使うことで、巡視の度に手書きで人数分書く必要があったのが簡単に入力できるようになり、空いた時間を使ってほかの業務を進めることができます。
――導入のコツは。
石本 IT導入支援の担当者にとって、使っているイメージがつきやすいか、仕様書を見るだけである程度理解できるかがポイントです。また、IT化が手付かずの施設に導入する際には、私とITに詳しい施設長2名で協力して導入支援をしています。
そのほかにも、IT関係の知識が導入にかかる時間に関係するため、導入施設での勉強会だけではなく、本部でも月に一度はRPAなどの勉強会も行います。困ったときにすぐに聞ける人がいる環境を導入初期に作ることが大切です。

さわやか横浜栄館の外観
――そのほかに注力していることは。
石本 九州大学と共同開発した「ライフマップ」というツールを利用し、利用者の生まれたときから今までの人生について聞いた上で、夢を応援しています。
具体的には、リハビリテーションに消極的だった要介護4で車いす生活をしている利用者が、聞き取り時に「昔食べた有名なラーメン屋にまた行きたい」と言いました。ラーメンを食べに行くためには歩行や1人でトイレに行けるようになる必要があり、その目標のためにリハビリをしようと促したところ、10ヵ月後には要介護2 まで改善しました。
話を聞いた上で、思いを汲み取って自立支援に取り組むのが大事だと思います。
――今後の展望は。
石本 今後も新たなIT機器を導入して、業務改善や利用者のQOL向上を目指しています。また、介護業界の大きな問題は人手不足のため、システムやIT機器を使うことで少ない人員で質の高い介護をできるようにしたいです。