アメリカの老人ホームに2年ほど住んでいた十河新作さん(92歳)。その後、日本のホームに転居すると「入居者同士の笑いが少ないことにびっくりした」という。
人生の最終章を送っている仲間たちに、もっとたくさん笑って、楽しい日々を過ごしてほしいという想いで、このほど書籍を発行。アメリカと日本の老人ホームの違いやユーモアの感性について、十河さんに伺った。

十河新作さん
――日本のホームに笑いが少ない理由は何でしょう
十河 そもそも、おしゃべりが少ないことです。食堂でさえも、とても静かですね。その根源を探ると、「話し言葉」を重視してこなかった文化にあるのではないでしょうか。「読み・書き」は昔から大事にしろと言われてきましたが、「話す」はそこになかったです。
笑いの文化を勉強してみると、日本人は礼儀正しいですが、日常のおしゃべりや笑いが欠けているということが見えてきました。
――笑いを生むためどんな仕掛けをしてきましたか
十河 ホームが主催するイベントに全て参加して入居者と親しくなり、新入居者歓迎会や川柳大会を自ら開催するなど、ささやかな試みをしてきました。
「今年を振り返っておかしかったこと」を共有した会では、皆さんで笑って楽しむことができたので、恒例行事として続けたいです。

現在入居する、介護付有老「オーシャンプロムナード湘南」
――なぜ、ユーモアに関心を持つようになったのでしょうか
十河 アメリカでの経験が大きいです。現役時代、ジェトロに所属し計8年程アメリカに駐在する中で、ユーモアに触れてきました。また、アメリカの老人ホームでは入居者同士のパーティなど交流が盛んで、いつも笑いに満ちていました。
話すことや笑いはホームの生活を楽しくするために大きな役割を果たしていると知ったのです。
――本を発刊されましたが、どのような想いで執筆したのでしょうか
十河 実例を伝えることで笑いの持つ力を感じていただけると思い、自身の体験も踏まえエピソードをまとめました。楽しいホームは、職員や経営者だけでなく入居者も、積極的に企画を考え、実行していくことでつくるものです。
本を通じ、多くのホームが楽しい「我が家」になることを願っています。
◇◇書籍紹介◇◇
もっと笑って!もっと楽しんで!
~老人ホームの暮らしにユーモアと笑いを~
著者:十河新作
制作協力/アドバイス:CSねっと企画合同会社
代表長嶺堅二郎
定価:1000円(税込)