今夏「あのデイサービスセンターには、なぜ人が集まるのか?」という本を、PHP研究所から出版予定です。全国からユニークな取り組みをする15施設を、紹介する予定です。その本では、一般社団法人日本デイサービス協会が主催する「デイサービス5選2021」に選出された5つの施設も掲載します。

 

執筆のための取材を進める中で、これからのデイサービスに必要ないくつかのポイントが見えてきました。今回は「自立支援」について、取り上げてみたいと思います。デイサービス施設長の皆さんは、ぜひご自身の施設と比較してほしいと思います。

 

 

◆機能訓練だけでは差別化できない

デイサービスには、食事や、入浴サービスを提供したり、整容やレスパイトの役割もあります。しかし前提としては、在宅生活をできる限り延伸するための〝自立支援〞の機能があるべきです。

 

ここで「機能訓練」という言葉を使わなかったのは、今回取材した施設のすべてが〝身体機能向上〞だけを目的としておらず、自宅での生活課題の解決、さらには社会活動への参加を目指していたからです。

 

マシンをたくさん置き、専門職を配置して機能訓練をして、ADLを向上させている施設は、ここ数年でかなり増えました。裏を返せば、機能訓練だけではもはや差別化できない時代に突入しています。掲載事業者のような〝選ばれる施設〞になるためには、「効果的な訓練」以上の〝何か〞が必要だと感じました。

 

 

 

ニーズとデマンドを意識する

15施設に共通していたことは、アセスメントと目標設定の目的が明確なことです。

 

アセスメントで、利用者の「できないこと(課題)」や「やりたいこと(目標)」を聴き取ることは、重要な業務です。しかし利用者から語られるそれらの要望は、実際に自立するための本質とはずれているかもしれません。

 

アセスメントでは「ニーズ」と「デマンド」の違いを理解し、言葉にされない「ニーズ」の方を探らなくてはいけない。そしてその上で、達成可能な目標を設定すべきだと、取材時には異口同音に語っていました。

 

 

機能訓練は3つの組み合わせで

今回の取材で、デイサービスで行われる機能訓練には、3つの種類が必要だと痛感しました。

 

①セルフトレーニング
②個別(グループ)トレーニング
③自主(自宅)トレーニング

 

「セルフトレーニング」は、活動量の基礎をつくるものです。リハビリマシンや様々な訓練器具で、それぞれの状態に合わせて訓練していただきます。訓練項目には、運動だけでなく「脳トレプリント◯枚」「巧緻動作訓練◯分」のように、ノルマを決めて行っているところもありました。

 

「個別(グループ)トレーニング」は、ほとんどのデイサービスが行っています。取材先では主に機能訓練指導員が行ってはいましたが、それだけでは活動量が足りないため、生活課題別にグループをつくって、介護職が中心に行っている施設も多くありました。

 

そして、最後の「自主トレ」です。デイサービスセンターの利用者は、どうしても要支援1〜要介護2程度の軽・中度の方が多く、週2回程度の頻度で通所する方がほとんどです。しかしそれだけでは、大きな回復は期待できません。

 

そこで、通所しない日に個別に宿題を出して、自主トレをしていただいている施設が多くありました。

 

 

活動と参加

今回、最も印象的だったのが、ICF(国際生活機能分類)が浸透していたことです。施設内のサービスに留まらず、日常生活における「活動」と「参加」のところまで、フォローしていたところが、時代の流れを感じました。

 

前述の通り、デイサービスに与えられた使命は、ICFで言う「生活機能(心身機能・身体構造)」の向上だけではありません。最終的には「役割」を持ち、社会に「参加」するところまで支援すべきです。しかし実際には、なかなかできることではありません。それが浸透し、やりきれているところが、15施設の強みだと感じました。

 

 

現在、介護業界で競争が最も激しいのがデイサービス事業です。ぜひ、これらの施設をお手本にしていただきたいと思います。

 

 

糠谷和弘氏 代表コンサルタント ㈱スターコンサルティンググループ
介護事業経営専門のコンサルティング会社を立ち上げ、「地域一番」の介護事業者を創り上げることを目指した活動に注力。20年間で450法人以上の介護事業者へのサポート実績を持つ。書籍に「介護施設帳&リーダーの教科書(PHP)」などがある。

 

 

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