セコム(東京都渋谷区)とセコムグループで介護付有料老人ホームを手掛けるアライブメディケア(同)は、「アライブ世田谷中町」にて、セコムが開発中の見守りセンサーの検証試験に昨年12月から取り組んでいる。防犯・防災の「ホームセキュリティ」に留まらず、センサーを使った高齢者の「見守り」の需要にも着目。
セコムのSMARTプロジェクト河村雄一郎担当課長と技術開発本部 スマートライフG古田展康マネジャー、アライブメディケアの安田雄太社長とNOZOMI LABORATORY 野上辰男所長の4人に話を聞いた。
3種のセンサー活用
――同じグループだが、一緒にプロジェクトを進めるのは今回が初めてか
セコム河村 2014年頃から「SMARTプロジェクト」を立ち上げ、地域の高齢者のお困りごとに対応する「くらしの相談窓口セコム暮らしのパートナー久我山」を開設しています。セキュリティ事業が根幹である我々は、当初は医療や高齢者の知見が足りておらず、アライブメディケアの皆さんに介護などの相談に対応いただき、単なる連携ではない「顔の見える関係」を築いてきました。しっかりプロジェクトを共に行うのは、今回が初となります。

セコム SMARTプロジェクト
河村雄一郎担当課長
アライブ安田 セコムの皆さんと「施設と在宅の間にある壁」の問題について情報共有をしてきており、当社も施設内だけでサービスを完結させず地域の中で役割を果たす意識を持っています。共に地域に貢献すべく、今回の協働に至りました。

アライブメディケア
安田雄太社長
――セコムはホームセキュリティの分野で見守りに関わってきた
セコム河村 ホームセキュリティの契約数は約148万件(昨年12月末)となり、お客様のニーズが多様化しています。昨年は全体の約2割が見守り目的での契約で、年々増えています。昨年6月には、玄関などの防犯センサーの検知情報を家族がアプリで確認できる「安否みまもりサービス」を開始しました。現在、より見守りが必要になったお客様に向け、さらに詳細な情報がわかる新しいセンサーの開発を進めています。
――今回、施設内での検証試験では複数のセンサーを活用している
セコム古田 居室内での見守りを通じて入居者のQOL向上に役立て、さらにはホームセキュリティにおいても、健康状態や環境に応じた見守りサービスを目指すことを目的に進めています。
検証するセンサーは3種です。①ミリ波センサーでは、電波で距離を測定し、入居者の位置・姿勢・活動量の情報を取得します。②TOFセンサー(3次元画像センサー)は、近赤外線の照射によって姿勢や転倒などがわかります。③マイクロ波センサーでは、電磁波で心拍数・呼吸数・心拍変動などのバイタル情報を取得できます。
これらセンサーを別々に使用する会社は多いですが、3種を組み合わせて検証試験するのは珍しいのではないでしょうか。データをしっかり取り、今後どう活用していくか、一緒に検証していきます。

セコム 技術開発本部
スマートライフG
古田展康マネジャー
「施設と在宅の壁」なくす
――どのようにデータを活用するか
アライブ安田 職員の生産性を上げるためでもありますが、最大の目的は介護の質を上げることです。1週間前の情報と比べてどうかなど、介護の視点で分析し、客観的データに基づく最適なケアの構築につなげていきます。
アライブ野上 当社はもともと薬や栄養摂取量などのデータはしっかり持っています。今回さらに睡眠・活動のデータをとり、ケア記録と突き合わせることで、日中のリハビリ・食事などに活かしていきます。ほかにも心拍変動を見て入居者のストレス度合いを確認する、睡眠とBPSDとの関係性をみるなど、「入居者を一番幸せにする因子は何か」を検証していきます。

アライブメディケア
NOZOMI LABORATORY
野上辰男所長
グループの総合力発揮
――セコムグループは、医療・介護・健康・予防事業など総合的なメディカルサービスを手掛けていることが強み。グループとして、どのように高齢者の見守りに取り組んでいくか
セコム河村 我々は施設に入居される手前である、「少し見守りが必要になってきた方」が在宅の期間をより長く過ごせるよう貢献していきたいです。「安全・安心」の環境を提供させていただくために、セコムの強みを発揮したいと考えています。
アライブ野上 地域包括ケアの中で、質の高いサービスを提供する役割を当社は担っています。地域の中で「幸せ」を広げていけるよう、セコムの皆さんと共に連携していきたいです。
アライブ安田 セコムと協力して行っていくと共に、産学連携や医療連携も深めていきたいです。また、現在は様々なテクノロジーが点で開発されていますが、ゆくゆくは点と点をつなぐ開発を期待しています。
セコム古田 今後、データは手軽に誰でも取れる時代になると思います。その中で差別化を図るため、我々はグループで培ってきた専門知識を活かし、解析を泥臭くやっていくことに尽きます。データをどう意味づけし、家族や介護・医療へどのようにつなげていくかが重要なのではないでしょうか。