埼玉県で在宅診療所運営
昨今、重要性がますます高まっている在宅医療。医療法人社団高栄会みさと中央クリニック(埼玉県三郷市)は、県南東部を中心に患者を訪問し、年間で約150名の看取りを行っている。クリニックについて、また、在宅医療の質を高める取り組みを、高橋公一理事長に話を聞いた。
※「高」ははしごだか

高橋公一理事長
――クリニックについて教えてください。
高橋 開院は2008年です。クリニックは2階建てで、1階が外来、2階が在宅往診部のハイブリッドなクリニックとなっています。20年4月に開設したさいたま市の分院と合わせて、三郷市を中心に、埼玉県のみならず、千葉県流山市、柏市、東京都葛飾区、足立区などへ在宅診療を展開しています。
医師は、常勤は私を入れて2名、非常勤6名、さらに来月から非常勤の先生が2名増えます。看護師2名と、臨床検査技師も在籍しています。当院は医療依存度の高い患者を担当することが多く、臨床検査技師がいることで看護師の負担も軽減し、在宅診療における分業も進めています。
在宅部の患者は約1000名で、特別養護老人ホームや有料老人ホーム入居者が約800名です。特養では入居者の健康管理や、胃ろうの管理などを行っています。残りが居宅の患者です。
居宅では、家族とのコミュニケーションが重要です。家族へのアドバイスも欠かさず行います。
外来の患者は発熱外来やコロナのワクチン接種含め、1日100~120人前後です。
――終末期の医療について、重視していることを教えてください。
高橋 重度の患者を診る際に、次のポイントを意識しています。やれることをやること、やりすぎないこと、です。

終末期の医療について「最大の目的は患者の苦痛をとること」だと語る。
例えば腹水が溜まった患者に対して、病院入院中なら1回3~4リットル排液を行いますが、在宅診療では、患者の血圧や脈拍などのバイタルサインへの影響を最小限にするために、1回1リットル前後抜くことにとどめておきます。最大の目的は、患者の苦痛をとることだからです。やることは必ずやる、けれどもやりすぎないことを心がけています。
血糖値の管理についても、数値を下げることだけを目的とせず、好きなものを食べられる幸せを奪うことのない血糖コントロールを目指しています。
本人だけでなく、家族が死と向き合う時間も必要です。看取りの時が近づくと、「そろそろ、そういう時期ですね」といった声を掛け、一旦、家族と本人だけで過ごせる時間を作っています。
――高齢者に対する医療では多剤併用の解消も重要です。
高橋 薬の種類だけでなく回数減にも取り組んでいます。
種類について、一般に知られるように服用する薬の種類が6種以下になるように調整します。そして、服用回数を減らすアプローチも行います。薬も変化しており、今まで2剤であったものが1剤で済むようになったものもあります(合剤と言います)。
服用回数が減ることは、患者を支える人々の負担の軽減につながります。
――昨今のコロナ禍でクリニックに影響はありましたか。
高橋 当院には、PCRの検査機が導入されているので、担当患者さんが発熱した場合には、可能な限り早く伺って、検査ができるようにしてあります。また、陽性者が出ると、施設では、濃厚接触者が一度に複数人出ることも珍しくないので、一度に何人もの患者に対して検査ができるようにしています。
一方で、通常の診察において、施設で陽性者が発生した際には、施設側の要望でオンライン診療を実施することもありました。