医療法人社団青泉会下北沢病院(東京都世田谷区)は、足に関する疾患を専門的に診る「足の総合病院」だ。健康の基礎をなす歩行の維持で、市民の健康寿命の延伸を目指す。患者の治療に加えて、医療者の育成、足の健康の啓発活動も行っている。

 

 

下北沢病院は病床数53床、診療科は整形外科、皮膚科、血管外科、形成外科、糖尿病内科、感染症科、腎臓内科、麻酔科となっている。

 

久道勝也理事長をはじめ6名の足の専門医が在籍。フットケア指導士、スポーツシューフィッターなど、足に関するスキルを持った職員が多数いる。外反母趾や巻き爪をはじめとした、足に関わるさまざまなトラブルにワンストップで対応する。

 

2021年の外反母趾の手術件数は173件で、全国でも上位。また、下肢カテーテル治療件数も21年は170件で、大病院と同等レベルの件数だ。

 

 

足病医学は健康の延伸に大きな意味がある。人間は基本的に、
①歩行が困難になる
②排泄が困難になる
③食べられなくなる
の3ステップの「階段」を下りて死に至る。その①の階段を降りるのをできる限り遅らせることに貢献する。

 

社会保障費抑制という観点でも重要だ。歩行の維持が困難になれば、その人を支援するために必要な金銭的、人的資源投入量が増加する。要介護度別の状態像(表)を見ると、先述の3ステップを降りるごとに、介護度が高まっている。

 

 

最初の①のステップを降りるのを遅らせることが、経済的にも大きな意味があることが分かる。

 

 

「例えば、巻き爪の痛みが原因で歩かなくなり、フレイルが進行、ついには疾患を抱えてしまう高齢者の場合を考えます。最初の段階で、適切な爪のケア方法を伝えるという、費用もほとんど必要ない対策だけで、その後にかかる医療・介護の費用が大きく変わってきます」(久道理事長)

 

久道勝也理事長 「足病医学は、必要とされているがニーズが満たされていない」と語る

 

 

 

日本において、足病医学の認知度は高くない。

 

久道理事長は、「G7の中でも日本だけ該当の領域がありません。先の社会的な意義を踏まえて、日本における足病医学は、『必要とされているが満たされていない』領域です」と語る。

 

そのため下北沢病院では、足病医学の社会への啓蒙、医療者への教育にも力を入れている。

 

社会への啓蒙では、書籍の執筆などを行っている。20年には「〝歩く力〟を落とさない!新しい『足』のトリセツ」と題した一般向けの書籍を出版。

 

「〝歩く力〟を落とさない新しい『足』のトリセツ」。啓蒙活動の一環で一般向けに出版した書籍

 

 

また、「足の8020」運動として「80歳で20分間きびきび歩けること」を目指すプロジェクトを発足。アシックス社やパナソニック社など、さまざまな業種業界・自治体・企業などが参加し、足の8020実現に向けて意見交換、商品開発などのコラボレーションを行う。

 

医療者の養成では、足病医学の先進国である米国から、第1人者である3名の教授が監修した病院オリジナルの教育プログラムを開始している。北里大学病院やがん研有明病院など各基幹病院からの研修受け入れにも積極的だ。

 

「社会への啓発は特にタフな壁だ」と久道理事長は言う。足病医学の発信で人生100年時代を足元から支える病院を目指す。

 

下北沢病院では足病医学の社会への啓蒙も行う

 

 

 

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