事業者の利益確保の道、示す必要

 


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16日に開催された社会保障審議会介護保険部会において、介護保険法改正に向けた、今後の検討の進め方が論点と共に示されました。

そのうち、「給付と負担」に関するテーマにおいて、報酬の適正化に向けた検討が行われることとなります。

 

また、413日に開催された財政制度等審議会財政制度分科会においても財務省からいくつもの報酬抑制案が示されており、とりわけ在宅介護事業者にとって関心の高い「要介護12の方の生活援助及びデイサービスの総合事業への移管」について、論考したいと思います。

 

 


この要介護12の方を総合事業に移管することには、現行の総合事業の枠組みのままでは、絶対に阻止しなければならないとの強い反対の立場であります。

 

その理由は、先に総合事業へと移管された要支援12の状況を見れば明らかであり、市町村の裁量によって報酬単価やルール緩和が行われ、報酬が2割から3割削減されるケースが散見されており、更に厳しい削減幅の自治体も存在します。


この状況が、要介護12にも及べば、訪問介護及びデイサービスの利用者の多数は要介護12の方で占められているため、間違いなく大半の事業者は事業継続が困難な状況となり、数多くの介護難民が生じ、地域包括ケアモデルの崩壊へと繋がることとなります。

 

この表現は決して過剰表現ではなく、だからこそ、過去2度の介護報酬改定においても、慎重な議論が繰り返され、実現には至りませんでした。

 

 

他方で、将来の人口構造を鑑みると軽度者改革の議論がこれから本格化していくことも避けがたい現実であります。

私は、仮に要介護12の方の総合事業への移管を検討するのであれば、市区町村に全面的枠組みを委ねるのではなく、国が一定の人員基準や設備基準等の要件緩和の方向性を示し、単なる報酬削減だけではなく、事業者のコスト削減も同時に実現し、利益確保の道を示すことが必須であると考えます。

 


その際に重要なことは、利用者のサービス品質低下につながらないこと。そしてもう1つは、総合事業の枠組みだけでの制度設計ではなく、介護保険制度との一体運用に基づく要件緩和の検討が必要です。

 

総合事業のみ要件緩和が実現されても、それは新たに総合事業だけを取り組む事業者への選択肢が広がることとなりますが、現行事業者は要介護3以上の方に対する介護保険制度との併用となることから、同時一体的な運用での要件緩和が必須となるのです。

 

 

業界関係者は、今後の議論の動向を注視していかなければなりません。

 

 

斉藤正行氏 プロフィール
2000年3月、立命館大学卒業後、株式会社ベンチャーリンク入社。メディカル・ケア・サービス㈱の全国展開開始とあわせて2003年5月に同社入社。現在の運営管理体制、営業スキームを構築し、ビジネスモデルを確立。2005年8月、取締役運営事業本部長に就任。2010年7月㈱日本介護福祉グループ副社長に就任。2018年4月㈱ピースフリーケアグループ代表に就任。2018年6月、介護業界における横断的・全国的組織となる一般社団法人全国介護事業者連盟を結成。㈱日本介護ベンチャーコンサルティンググループの代表を務めている。

 

 

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