大阪府高石市で独立型の居宅介護支援事業所を3ヵ所運営している「なないろ」は2013年の設立以来、離職はゼロ。当初、職員数は2人であったが求人媒体を使わず30人に増やし、報酬の透明化により職員がライフステージに応じて働ける環境づくりをしている。

 

 

同社の総担当件数は約1150件。30人の職員(1名事務職員)のうち、約7割が30〜60代の女性。5年以上勤務する職員が10名以上在籍する。
学生時代から介護業界で働いてきた渡部功司社長は「開業時、今まで働いてきた中で『一緒に働きたい』と思ったケアマネジャーに声をかけ採用した。その後は全て既存の職員からの紹介で採用したため、人間関係も良いと感じる」と話す。

 

なないろ 渡部功司社長

 

 

求人媒体、使用なし 

 

求人媒体やH P 制作、パンフレットには費用をかけていない。その分、既存職員が新しい職員を紹介した場合は手当を設け、職員の報酬として還元する仕組みにしている。

 

訪問介護など併設せず、独立型の居宅だからこそ、「ケアマネジャー一人ひとりが広告塔」という意識を浸透させる。新規の利用者を紹介した場合も手当をつけることで平均1 日1.4件の新規利用者を獲得できているという。

ほかにもSNS更新担当者、研修担当者などケアマネジャー業務以外の仕事は担当制にし、各手当を設けている。

 

 

「報酬の透明化を心掛けており、ボーナスは歩合制。仕事した『時間』よりも『量』に対価を支払っている」(渡部社長)。
担当数30件で年収300万円をベースとし、担当数1件追加するごとにボーナスをアップ。先にあげた手当を含め、担当数を増やし、主任介護支援専門員を取得するなど昇格すれば5年勤務すると年収500万円に達する報酬体系だ。

 

「毎月、希望の担当件数を聞き取り、オーバーワークにならないようにしている。そのため残業はほぼない」と渡部社長。出産や子育て中の職員は、担当件数を少なくし、事務作業を担うことで無理なく働き続けられるようにしている。

 

歩合制のため、担当件数が少ない入職1年目は年収が低めの設定となるが、渡部社長は「そういったマイナス面含め、採用時には当社のデメリット部分も伝える『逆面接』を行っている」と話す。1年目の給料は低いが5年目には収入がどれくらいになるかなど、給与、残業、休日などの待遇面を、データで見せて説明。納得した人のみ履歴書を持ってきてもらい面接する、という段取りによって入職後のギャップを少なくし離職がないよう努めている。

 

 

「ケアマネジャーが〝何でも屋〞にならないよう、『我々の仕事は、契約書に書いている内容である』と職員には日頃から伝えている。クオリティの高いサービスを提供するためにも、職員の幸せを一番の優先順位としている」(渡部社長)。
〝無理難題〞を押し付ける利用者1人よりも職員1人を大事にする姿勢を貫くことで、職員に安心感を与える。

 

また、ケアマネジャー同士がチームとなり働けるよう、週に1回は全員が参加する会議を設け情報交換し、チャットも活用して知見を共有する。コロナ禍以降は状況に応じて在宅勤務も可能にした。

 

「職員が仕事のために犠牲になるのは本末転倒。職員が働き続けられるよう〝当たり前のことを当たり前にやる〞ことに尽きる」と渡部社長は語る。

 

 

職員の紹介で人材や新規利用者を獲得

 

 

 

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