ケアメイトは東京都品川区で訪問介護、訪問看護、小規模多機能型居宅介護、居宅介護支援などを中心に、在宅ケアサービスを総合的に提供している。2018年に開設した看多機「けめともの家・西大井」は企業主導型保育園を併設した、多世代交流を促す造りが特徴。高齢者のQOL向上に加えて、地域との強いつながりを生み出すことで、持続可能な事業の実現を目指す。
国交省モデルで多世代住宅計画
けめともの家・西大井は看多機、保育園、地域交流スペースを備えている。板井佑介社長は、「高齢者が地域の『おじいちゃん、おばあちゃん』といった役割を持てる場所を目指しました」と語る。
道路に面する部分には目隠しのフェンスなどを作らず、大きな窓を配置し内部の様子が見えるようにして「近寄りがたい」雰囲気を軽減(写真参照)。内部は吹き抜けで、1階中央部分にキッチン、リビングダイニングを配置している。看多機スペースと保育スペース、1階のリビングまで壁や扉で仕切ることなく、地続きとなっている。

施設外観。フェンスなどを作らず、通りから中の様子が見えるようになっている
保育園の子ども達は、この建物内の思い思いの場所で過ごすことができるため、生活空間が高齢者の過ごす空間とも重なる。それが高齢者にとって、子どもを見守る、話し相手になる、いたずらを注意するといった自然な交流を生み出す。子どもにとっては、高齢者とのふれあいは、社会のルールなどを学ぶ機会だ。
竹内留美子管理者は施設の特徴について、「どこで過ごしていても、足音や話し声、キッチンから漂ってくる匂いなどによって人の気配が感じられ、安心感があります」と話す。特に利用者には独居の高齢者が多い。様々な五感の刺激が、認知機能の維持に貢献し、QOL向上が期待できる。
この施設は今年、一般社団法人日本医療建築協会(同港区)の「医療福祉建築賞2021」を受賞した。
現在、けめともの家・西大井に続く多世代ケアと地域交流拠点として多世代シェアハウスを中心に多様な機能を持つ施設を開設する「荏原プロジェクト」を進めている。
シェアハウスはひとり親世帯や独居高齢など住宅確保要配慮者を受け入れる。そこでは就労支援や、介護予防、シェアキッチンなどを活用した食支援を提供。多様、複雑化するニーズにワンストップで対応する。このプロジェクトは、国土交通モデル事業に選定されている。25年を目途に開業予定だ。
地元商店と積極的なコラボレーションもする方針だ。例えば、地元飲食店で高齢者向けのメニューを考案する、といったことを想定している。
「地元住民が、この地域に愛着を持てるように取り組みたい」と板井社長は語り、法人が地域の様々な資源をつなげる「車輪のハブ」になることを目指すという。
地域の誰にとっても欠かせない存在となることで企業価値を向上させ長期に渡って地域で存続可能な運営を行っていく。

板井佑介社長(左)と竹内留美子管理者(右)