35年以上にわたって滞っていた「かかりつけ医」制度化の議論が動き出しそうだ。1987年の旧厚生省の「家庭医問題懇談会」報告書が日本医師会の大反対にあって頓挫して以来、かかりつけ医はその定義も不明確なまま制度化もされてこなかった。

 

しかしこうした状況が、コロナ禍によって変化の兆候が表れた。医療のフリーアクセスが看板の我が国で、コロナ禍ではかかりつけ医の機能がまるで働かなかった。

 

こうした事態を受けてかかりつけ医の制度化の議論が再開されつつある。今年6月の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」ではこのかかりつけ医の制度化が取り上げられる。その制度化にあたっては、以下の5つのポイントを押さえる必要がある。

 

ポイント①かかりつけ医の定義
制度化にあたっては、まずかかりつけ医の明確な定義が必要だ。例えば必要に応じて専門医へ紹介するゲートキーパーとして健康問題の相談から健診に対応する、コロナなどの有事にも対応する、エビデンスに基づいた疾病管理を行う、休日・夜間診療に対応できる、在宅医療に対応するなど。

 

ポイント②登録医制
専門医へのゲートキーパーとして、かかりつけ医の登録制を法制化すべきだ。登録制としては英国のような厳格な登録ではなく、フランスのようなゆるやかな登録制をまず導入すべきだ。また大規模災害や感染症パンデミックなど有事にあたって保健所や行政と共同する公衆衛生医としての役割を持つかかりつけ医の登録制も進めるべきだ。

 

ポイント③成果払い方式
かかりつけ医の行う診療は「科学的根拠に基づく医療(EBM:Evidence‐BasedMedicine)」に基づいて行われるべきだ。その後押しのため、ガイドラインの順守状況や診療のアウトカムを評価する成果払い方式を導入すべきだ。

 

ポイント④地域フォーミュラリー
かかりつけ医の治療技術としては薬物治療が多くを占める。そのため、医薬品の安全性、有効性、経済性の観点から、地域の第三者委員会が選んだ推奨医薬品リストである地域フォーミュラリーをかかりつけ医が使用することが必要だ。

 

ポイント⑤かかりつけ医とDX
かかりつけ医の要件としてオンライン診療、電子処方箋、標準化された電子カルテなどDX(デジタルトランスフォーメーション)は必須だ。

 

 

かかりつけ医の法制化の時期について考えてみよう。一つの区切りが団塊の世代800万人が後期高齢者となる2025年だ。そのため遅くとも24年にはかかりつけ医制度の関連法改正案の成立を図りたいものだ。

 

 

 

武藤正樹氏(むとう まさき) 社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ相談役

1974年新潟大学医学部卒業、国立横浜病院にて外科医師として勤務。同病院在籍中86年~88年までニューヨーク州立大学家庭医療学科に留学。94年国立医療・病院管理研究所医療政策部長。95年国立長野病院副院長。2006年より国際医療福祉大学三田病院副院長・国際医療福祉大学大学院教授、国際医療福祉総合研究所長。政府委員等医療計画見直し等検討会座長(厚労省)、介護サービス質の評価のあり方に係わる検討委員会委員長(厚労省)、中医協調査専門組織・入院医療等の調査・評価分科会座長、規制改革推進会議医療介護WG専門委員(内閣府)

 

 

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