前記事で紹介した春日台センターセンター(KCC)。運営法人である愛川舜寿会の馬場拓也常務理事と、建築家で一級建築士事務所teco(東京都台東区)主宰の金野千恵氏に、同施設の成り立ちや目的について聞いた。

 

 

――最初は、場所から始まった

馬場 「春日台センターの跡地に、また地域の中心をつくるんだ!」というのが始まりだったので、何ができるかはわからなかったんですよね。この場所に必要なものは何か、地域住民のニーズを聞き取りながら進めてきたのですが、開設までに6年もかかりました。

「事業」ありきで進むのが通常だと思いますが、地域の中で「場所の記憶」が呼び覚まされるような介護事業がつくられていくことを大事にしました。

 

金野 本質的な地域の課題って、単発的なものじゃなく持続的なんですよね。例えばスーパーが閉店してから、若い子が普段どこにいるのか聞いてみたら「コインランドリー!」と言っていて。この町らしい居場所だなと思ったんです。

 

馬場 そこに福祉とのかかわりを考えてたどり着いたのが洗濯代行。障害特性を加味すれば、我々以上に綺麗に畳めるようになります。春日台センター時代に誰もが食べた「春日台コロッケ」も、「もう食べられないのか」と残念がる声が聞こえてきて。それでコロッケスタンドもつくることにしました。

 

多角的な施設に見えるかもしれないけれど、文脈としては1本です。

 

社会福祉法人愛川舜寿会
馬場拓也常務理事

 

 

「場が人をつくる」設計の力

――人と人との交流を生む、建物の工夫や仕掛けづくりについて

金野 KCCは地域に開かれた共有スペースも多いので非常に賑やかです。ただ木造なので、2階の共有スペースなどで子どもたちが走り回ると、階下の利用者にはうるさい時がある。けれど、それは逆に「上に人がいる」ことを感じられる「つながり」でもある。

「下に人がいる」ことを想像して静かにしたり、「外で子どもが遊んでいる」ことを感じて縁側に出たり。人と一緒に過ごすための気づかいが窮屈なものでなく「ここにいたいから、大切なこと」として積み重なっていくのだと思います。

 

馬場 これは建築の視点から教わったことですが、「場が人をつくる」。KCCでいえば、僕は方向性を言語化する人、そしてそれを設計していく人が建築家の金野さん。

土間空間に駄菓子屋スペースを設けてみたり、自転車置き場を用意したり。そんなことでももちろん子どもたちは集まるんだけど、もっと作りこまれた「場」というものを、金野さんが見せてくれた。

 

金野 建築家の仕事として、「明確な予算も機能も何もないところからつくる」ということは一般的ではないんです。馬場さんも私も白紙からつくるのは初めてのことで、すべてが学びの6年間でした。

この拠点には塀やフェンスが一切なく、正面から裏側まで道が通り抜けています。さらに、GHと小多機、コインランドリーも土間の通路でつなぎ、外の道と合わせて子どもたちはぐるぐる回って遊んだり、地域の人も散歩に訪れたり、皆が自由にこの施設で過ごせるよう考えました。

 

 

建築家/teco主宰
金野千恵氏

 

 

――一般的な介護事業、福祉施設との違いは

馬場 圧倒的な違いは「目的」。僕の中では単純に「僕の住む町だからやっている」という感覚なんですよね。

実際に足を運んでこの光景を見た人が「ああ、共生ってこういうことかも」って感じたらそれが成果です。

僕の考えるKCCの目的のひとつには、長期的な「人材確保」があります。今、利用者や職員と当たり前のように毎日触れ合っている子どもたちが、15年、20年後に「KCCって福祉施設だったのか」と気づく時が来る。そうなれば、この仕事に魅力を感じる子が福祉人材になる。「昔の遊び場」が「将来の職場」になることがあるんじゃないかって思うんです。

 

金野 馬場さんの強い実感から湧き上がるプロジェクトに伴走するのは本当に楽しかったです。「福祉施設は入っちゃいけない」という環境は大人がつくってきたものなので、それを覆す、子どもが直感的に楽しそうと思える場所を目指しました。

これから先、地域の変化に合わせてKCCも変わっていく。その変化も楽しみたいと思います。

 

 

地域とつながる通路から人が行き交い、多世代のコミュニケーションが生まれる

 

 

 

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