訪問介護事業所にて10年間のヘルパー経験を経て、現在3期目の川崎市議会議員(無所属)を務める添田勝氏。利用者の介護状態の改善に取り組む事業者を評価し、成果報酬を付与する「逆・介護保険」を提唱し、川崎市で実践されている。
6年間実行し、見えてきた成果について聞いた。

添田勝氏
「努力を評価する仕組みを」
――なぜ市議会議員を目指そうと思ったか
添田 ヘルパーとして働いていた際、かなりの長時間勤務をするも、賃金が上がらない状況に疑問を抱き、自分の手で現状を変えるべく立候補した。また、利用者の要介護度が高くなると報酬が増えるのに対し、事業者が利用者の自立のために努力し、要介護度が改善すると報酬が減る構造にも矛盾を感じていた。
――注力する「逆・介護保険」とは
添田 現制度とは逆に、介護状態を改善する事業者に成果として報酬を付与するもの。「かわさき健幸福寿プロジェクト」と称して2016年から本格的に実行している。
自立支援に向けた質の高いケアをきちんと評価して現場のやる気を高め、利用者の健康寿命を伸ばし、破綻しない介護財政をつくることが重要。
――ほかの自治体もインセンティブ事業を行っているが、川崎市の特徴は
添田 特別養護老人ホームやデイサービスなど、特定の事業者だけが対象でなく、利用者Aさんの在宅生活を支えるケアマネジャーや訪問介護、福祉用具、ショートステイなどの担当事業所、全てが対象。1年間でAさんの要介護度やADLが改善するなど、一定の成果指標に到達した場合、全事業所に5万円付与する。
また、市のウェブサイトや事例集に掲載することで、事業所の価値を高めることにも寄与する。
1人4.9万円給付費抑制
――具体的な成果については
添田 6年間の通算で約4100事業所、2400名を超える利用者が参加した。
事業者からは「自立支援の視点を持ち、具体的な提案を行えるようになった」「ほかの事業者の役割を知れ、チームとして情報共有する機会が増した」と声が挙がる。1事業所5万円とはいえ、今までになかった評価する仕組みができたことに価値があると感じる。
プロジェクト参加者の要介護度改善率は全国平均値より上回っており、意欲向上にもつながった。
また、プロジェクトを通じ要介護度が改善したことで、介護給付費を抑制できたという結果も出ている。ここ2年間では約480名が参加し、総額約2350万円(参加者1人あたり約4万9000円)の介護給付費を抑制できた。
――今後の展望は
添田 IADLも評価の指標にしたり、LIFEとの相乗効果も図っていきたい。より詳細な評価が必要になるため、更にICTの活用も進めていく予定。
個人としては、「逆・介護保険」を中心に持続可能な介護保険制度を新提案すべく、今秋に書籍を出版する。また、プロジェクトを県全体に広めるため、来期に神奈川県議会議員を目指す予定だ。