管理者向けの研修を行っていると、受講者から「私はきつい性格なので、職員が寄り付かないのですが、どうしたら気軽に相談してもらえる関係になりますか?」という相談を受けることがあります。

 

もしご自身で自覚している場合は、「私は皆さんにきつい言葉を言ってしまう時があります。自分でも気をつけますが、悪い所は遠慮なく指摘してください。これまでのきつい言動で、皆さんの心を傷つけたり、相談しにくい雰囲気にしたりしていたこともお詫びします」と会議などで素直に自分の言葉で伝えることを提案しています。

 

 

職員や利用者・家族の中にも、「言い方がきつい人」は少なからずいます。伝えている内容が正しくても、それによって心が傷つき、折れてしまう人も多いと思います。
きつい言い方をしてしまう人は、相手の立場で物事を考え、言葉を発することが苦手です。いくらその人に対して「きつい言い方を直して欲しい」と思っても、本質はそう簡単に変わりません。

 

「言い方」だけの問題ではなく、「考え方」や「性格」にも関わる問題ですので、自分が同じようにされたらどんな気持ちになるかをロールプレイングなどで、当事者意識を持たせることも重要です。

 

 

◆ ◆ ◆

 

令和3年度介護報酬改定では「ハラスメント対策の強化」が明記されました。事業主に対して、職場におけるセクシュアルハラスメントやパワーハラスメント防止のための雇用管理上の措置が義務付けられました。その内容の一部を紹介します。

 

「事業主が講ずべき措置の具体的内容」

 

①指針
・「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」
・「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」

 

②特に留意が必要な内容
・事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発⇒職場におけるハラスメントの内容及びハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、従業者に周知・啓発を行ってください。
・相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制整備⇒相談対応窓口をあらかじめ定め、従業者に周知してください。「カスタマーハラスメント」においては、単に担当を変えるだけでは、真の解決策になりません。

 

 

「事業主が講じることが望ましい取組」

 

①顧客等からの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)防止のために、事業主が雇用管理上の配慮として行うことが望ましい取組例は、以下の通りです。
・相談に応じ、適切に対応するために必要な体制整備
・被害者への配慮のための取組(メンタルヘルス不調への相談対応等)
・被害防止のための取組(マニュアル作成や研修の実施、業種・業態等の状況に応じた取組等)

 

②介護現場では特に、利用者又はその家族等からのカスタマーハラスメントの防止が求めれています。前述の「事業主が講ずべき措置の具体的内容」を講じるに当たっては、「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」「(管理職・職員向け)研修のための手引き」を参考にすることが望ましいです。

 

 

◆ ◆ ◆

 

きつい言葉で傷つかない方法として「ひどい言葉を真に受けない人になればいい」というのは、乱暴で無責任であり、これもハラスメントです。「ひどい言葉を真に受けない人」を目指してしまうと、「相手の言葉に傷つかなくなる」よりも、「自分が〝傷ついていること〟に対して気づかなくなる」ようになってしまいます。

 

自分を誤魔化したり、自分に嘘をついたりする状態が続くと、心の病気につながってしまうこともあります。

「人がいない」、「人が辞める」と嘆く前に「お互い様」、「お陰様」といつも互いに優しさのある介護現場になるように心がけて下さい。

 

 

 

 

伊藤亜記氏
㈱ねこの手 代表

介護コンサルタント。短大卒業後、出版会社へ入社。祖父母の介護と看取りの経験を機に98年、介護福祉士を取得。以後、老人保健施設で介護職を経験し、ケアハウスで介護相談員兼施設長代行、大手介護関連会社の支店長を経て、「ねこの手」を設立。

 

 

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