今回は更年期の治療について、自身の経験も踏まえてフォーカスしてみる。

 

エストロゲンの欠乏に伴う更年期の治療には、正しく診断された更年期障害に対してホルモン補充療法(以下・HRT)が有効な治療法であるといわれている。

しかし、HRTに使用されるエストロゲン製剤の種類や量、経口あるいは経皮、冠動脈疾患、脳卒中、乳がんなどのリスクも患者にとっては最も気になるところである。さらに、子宮のある人は、子宮体がん予防で黄体ホルモンを併用するため、昨年末に日本でも使用可能となった天然型黄体ホルモン製剤についても関心は高い。

 

 

現在最新版となるHRTガイドライン2017年度版には、当時日本で天然型黄体ホルモンの使用許可が認められていなかったので記述はない。しかし、世界的には既に使用されており、12年の国際閉経学会・オフィシャルジャーナルに特集が掲載されている。

 

世界の専門学会のレコメンデーションでは、経皮吸収エストラジオール製剤と天然型黄体ホルモン製剤の組み合わせでは、心血管系疾患リスクが少なく、合成型の黄体ホルモン製剤に比べ、正常乳腺細胞や乳がん細胞に対しても増殖性作用が少ないということが示されていた。

 

 

 

使い方や個々人でリスクが異なる

 

 

では、全てこの天然型黄体ホルモンに置き換えることが良いのか?

 

HRTに併用する黄体ホルモン製剤によって子宮内膜癌リスクが異なることを示す研究【フランス(E3N)コホート研究(9208)】がある。ただし、黄体ホルモンの投与量、1ヵ月あたりの投与期間(持続併用か周期併用か)は解析対象に入っていないが、傾向は見てとれる。

 

使用期間5年以上と5年以下に分けられ、子宮のある人にエストロゲン単独の治療をすると、年数に関わらずリスクは高まる。天然型黄体ホルモンあるいはジドロゲステロンを併用した場合は、5年以上ではどちらもリスクは高まるが、5年以内であれば安全と示されている。またプロゲステロン系、ピルで使用するノルステロイド系の場合には、子宮内膜の抑制作用が強く、5年以上でもリスクは上昇しないと示されている。

 

 

 

このように、ただ天然型が良いというものではなく、長期に使用するリスクがあることは念頭に置くべきである。

 

 

一方で、黄体ホルモンの種類による乳がん発症リスクのデータはどうか?(Zhilan Yang et al.Gynecol Endocrinol.17)。先述の子宮内膜癌のデータとは逆に、天然型黄体ホルモンやジドロゲステロンの乳がんリスクは低いことが証明されているが、ほかの黄体ホルモン製剤では乳がんリスクが高いと示されている。

 

 

それぞれの特徴を理解した上で使用することが重要であり、全ての黄体ホルモンが同じではないことを認識しておくべきだろう。

 

しかし、ここで大きなジレンマが生じる。結局,どうすれば良いのか?

 

子宮内膜症保護作用は、黄体ホルモンに依存しているものの、適正な管理による予防は可能であるといわれている。しかし、乳がんや血管系疾患のリスクについては、患者の潜在的なリスク要因も大きく影響する。患者の健康状態、疾患発症リスク因子の正確な評価が重要になる。

 

 

次回に続く。

 

 

小川陽子氏
日本医学ジャーナリスト協会 前副会長。国際医療福祉大学大学院医療福祉経営専攻医療福祉ジャーナリズム修士課程修了。同大学院水巻研究室にて医療ツーリズムの国内・外の動向を調査・取材にあたる。2002年、東京から熱海市へ移住。FM熱海湯河原「熱海市長本音トーク」番組などのパーソナリティ、番組審議員、熱海市長直轄観光戦略室委員、熱海市総合政策推進室アドバイザーを務め、熱海メディカルリゾート構想の提案。その後、湖山医療福祉グループ企画広報顧問、医療ジャーナリスト、医療映画エセイストとして活動。2019年より読売新聞の医療・介護・健康情報サイト「yomiDr.」で映画コラムの連載がスタート。主な著書・編著:『病院のブランド力』「医療新生」など。

 

 

 

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