医療法人社団明和会(広島県廿日市市)は、サービスの質向上のために2018年から職員の労働環境の向上に取り組んでいる。6月1日より、地元企業、大学などの協力の下、サービス付き高齢者向け住宅でICTの見守り機器を使用した業務効率化の実証実験を開始した。

 

職員の負担軽減に加え、「働きがい」を定量的に評価することを目指す。

 

 

 

既存の取組との相乗効果に期待

 

 

同法人は大野浦病院(120床)を中心に、通所介護、訪問介護などの在宅系のサービス、認知症対応型グループホーム、サ高住「さくらす大野」(40室)を運営。医療、介護連携で地域完結型のサービスを提供している。

 

 

サ高住での実証実験は、6月1日から9月30日までの期間で行われる。ICT見守り機器「まもる~のStation」を転倒などのリスクが高い利用者が入居する10室に導入。ベッド上の呼吸・体動、居室の温湿度・照度、ドアの開閉、椅子の着座状況などを取得、手元のスマートフォンでそれらの情報を管理可能にする。

 

導入前後で訪室回数や職員の歩数、ストレススコアなどを比較するのが基本的な目的。

機器のサポートは地元企業のZIPCAREが担う。コンサルティング部分は、社会保険労務士や各種業界団体、大学・専門学校などが参加している組織、一般社団法人働き方改革実現ネットワーク広島が担当する。特に、データ分析は広島大学経営管理研究科監修の下で行う。

 

 

明和会で働き方改革を主導する、大浦病院パートナーシップ推進室の松原かほり室長は、今回の実証実験で最も重要視されているのは、ICT導入と職員の「働きがい」の関係を明らかにすることだと話す。

 

大浦病院
パートナーシップ推進室
松原かほり室長

 

 

 

ICT化による業務効率化が、職員の内面にどのような影響をもらたすか、定量的に分析する。具体的には

▽ハード(まもるーの導入による業務の変化、効果の実感)

▽ソフト(セルフマネジメントとマネジメント)

▽ハート(ストレス状況とモチベーションの変化)

▽従業員の心理的要素(成長、誇り、貢献、信頼、達成感)

についてアンケートを行う。

 

 

特にハートの部分は、「潜在的動機付けスコア(MPS)」を用いて分析する。これは

①技能多様性:多様なスキルが活かせる

②タスク完結性:全体を理解した上で仕事に関われる

③タスク重要性:重要な仕事である

④自立性:自分のやり方で進められる

⑤フィードバック:結果がどうだったか知ることができる

―といった要素を基に、(①+②+③)÷3×④×⑤という式で算出。

それぞれの要素は、「仕事内容やスケジュールに、いつもストレスを感じているか」といった設問に「当てはまる」を0点、「当てはまらない」を10点とし職員に回答してもらい、点数化する。

 

 

これまで働き方改革として、成長の機会や収入増を望む職員からの声を受け、勤務形態を▽標準型▽ワーク重視型▽準ワーク重視型▽夜勤専任型――の4 種を用意。標準型の年間勤務日数は244日、ワーク重視型は273日、準ワーク重視型は261日と選択できることで、「もっと勤務日数を増やし、収入増や成長したい」というニーズに対応している。併せて、5段階のキャリアラダー制度、副業解禁、といった取り組みで、意欲が高い職員の能力が存分に発揮できる環境だ。

 

加えて、今回の実証実験を機に法人全体でICT化を推し進め、既存制度との相乗効果でさらなる職員の活躍を促していく。職員の働きがいをサービスの質向上につなげ、最終的には法人施設の稼働率向上に結びつける方針だ。

 

 

「ICT導入、活用により本来の『人ができるケア』に集中し、働きがいを感じられれば、介護の魅力発信にもつながると考えています」(松原室長)

 

ICTが職員の「働きがい」にどのような効果をもたらすか、実証実験を開始した

 

 

 

スポンサーリンク

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう