アクタガワ(静岡市)は静岡県内で25施設、106事業所を展開する。21年3月時点で売上高は約36億2399万円、増収増益となっている。新たなサービス形態のデイサービス開設や、ECサイトなど、日々新事業に挑戦する同社の芥川崇仁社長に事業について聞いた。

アクタガワ
芥川崇仁社長
ECサイト事業、売上拡大
――人材面で、独創的な取り組みが。
芥川 「フラット経営」という考え方を社内に浸透させている。当社には縦ラインの組織という概念はない。財務状況など経営に関わる情報を公開し、職員が経営、サービスなどについて意見できる環境を作り、良い意見は実際に反映させる。
いくつもの社内表彰制度があり、それに応じ給与も上がる仕組みだ。創業時から人材派遣事業を手掛けるなど、人材面には力を注いできた。
――「地域コミュニティ創造」を掲げ、幅広いサービスを提供している。
芥川 初めて介護サービスを利用する人に、一辺倒なものを提案したくない。多様なサービスから最適なものを選び組み合わせて利用してほしいという思いから「アクタガワ流地域包括ケア」を構築している。
当社では、介護付有料老人ホーム「プレミアムハートライフ」やサービス付き高齢者向け住宅「ハートライフ」のほか、「ハートフルホーム」という複合施設を展開。地域ニーズ、建設コスト、立地などを考慮し、グループホームや通所、訪問、小規模多機能型居宅介護などから、2~6事業所を組み合わせている。来年以降、新たに3つの複合施設の開設が決まっている。

会社外観
――サービスで重視していることは。
芥川 サービス種別を問わず力を入れているのが、「生活リハビリ」。利用者、スタッフ共に目的意識を持ち、楽しく行えることが重要だ。
歩行訓練では、東海道五十三次を歩いていると見立て、一定の距離を歩いたら宿場の名産品を食べるなどゲーム性を持たせている。PTなどの専門職はもちろん、介護スタッフがリハビリに関する知識を備えていることは必須。全ての介護スタッフを対象としたリハビリ研修、検定を実施している。
さらに、「五感の生活」をコンセプトに掲げ、様々な工夫を凝らしている。例えば、当社の施設長は全員「そば打ち検定」の合格者だ。利用者はそばを打つ音、香り、味などを五感で楽しむ。コンセプトに沿ったサービスを徹底することで差別化を図っている。

リハビリの様子
――デイサービスでは、新たな展開も。
芥川 昨年には、普通のデイには通いたくないという人をターゲットに、カフェのようなお洒落な空間で好きな食事を楽しみ、個別リハを行う短時間デイ「カフェリハ」を試行的にオープンした。利用者数がほかのデイの3倍を超えるなどかなり好評だ。日々分析を重ねながら、新しい事業を試みている。
――ECサイト事業にも着手した。
芥川 当初は居宅介護支援事業所に併設する形で福祉用具事業を行っていたが、個人向けにWEBサイトで福祉用具の販売を開始したところ、年間1億円を売り上げるまでに成長した。現在、サイトのさらなる拡充を図っているところだ。
コロナ禍を契機に、デジタル分野には可能性を感じている。老若男女が趣味でつながる機会を創ったり、高齢者の作品を販売したり、社会問題の解決に寄与するサービスであれば、幅広く展開したい。
――M&Aの活用は。
芥川 数年前から前向きに検討している。対象は介護事業者に限らず、当社の理念である「地域コミュニティの創造」「五感の生活」「社会問題の解決」に即した事業者であれば一考したい。