医療法人社団勝榮会いりたに内科クリニック(東京都杉並区)は、地域住民のかかりつけのクリニックとして外来、訪問診療、法人健診の3部門を展開。子どもから高齢者まで幅広い患者に対応するため、人材教育に力を入れている。

特に、コミュニケーション力を育て患者の本当のニーズを引き出すことで、納得感ある治療の提供を目指している。

 

 

外来、訪問診療、法人健診展開

 

クリニックは東京メトロ丸ノ内線「方南町」駅よりすぐの立地。医師の体制は正規が5名、非常勤が9名。1日の来院者数は平均130名を超える。厚生労働省の調査では平均的なクリニックの場合、1日の来院者数は約40名という結果が出ており、それを大きく上回っている。

 

 

訪問診療では施設と個人宅合わせて約200名の患者の生活を支えている。患者は口コミで増えていったという。入谷栄一院長は「外来から訪問診療に至った患者も多くいます」と話す。

 

患者は外来で医師と接することで「医師はどのような人柄なのか」「相性はどうか」といった部分を見ることができる。「医師を実際に『見て選べる』という点がほかの在宅クリニックとの差別化になっています」(入谷院長)。

 

いりたに内科クリニック 入谷栄一院長

 

 

在宅での実績を重ね今年4月には厚労省の「在宅緩和ケア充実診療所」の施設基準を満たした。これは、機能強化型在宅療養支援診療所の届出を行っていることに加えて、緊急の往診実績、がん末期患者へ麻薬性の鎮痛剤を使用した鎮痛療法の実施などの要件がある。

 

診療では患者の満足度を高めるため、本人の「真のニーズ」を引き出すことを重視している。「例えば、外来の患者に市販で買える薬を出して終わりでは患者は納得できません。何を求めていたのか、それを引き出すことが必要です」(入谷院長)

 

外来での診察は主に医師、クラーク(医師が行う事務作業を補助する職員)の2名体制で行っている。クラークが記録を担当することで、医師は患者に専念するためだ。加えて、クラークが患者の様子を見て「満足していない」と見受けられた場合は、そのときに医師に患者を再び診ることを求める。

 

クリニック職員の知識、技術向上を目的に、毎週土曜日の午後には勉強会を開催。終了後は理解度を図る定期テストもある。参加後ポイントが付与され、一定基準を満たすとキャリアアップする仕組みで、積極的な自己研鑽を促す。

 

 

 

職員のコミュニケーション能力向上のため、朝礼、昼礼、夕礼でその日の目標とその達成度を報告する、週1回のエピソードシートで業務上感動したことを報告する、同僚への感謝を伝える「ありがとうカード」など、思考を整理し言葉にする機会を設けた。

 

そして、これらの取り組みの基礎を成すのが理念の教育だ。クリニックでは正規・非正規に問わず、法人のミッション、バリュー、ビジョンを明文化した「教本」を配布。それは業務マニュアルを兼ねており、理念に基づき、どう行動すべきかが記されている。

 

「ここには、『理念が守られなくなった場合、クリニックを畳む』と明記しました。ここに記されたことは本気で実現していく、ということを示すためです」(入谷院長)

 

 

また、医療と介護の垣根を越えた連携が必須となる在宅医療において、本人やその周囲の人の「真のニーズ」を引き出す会話力、思考を相手に伝わる具体的な言葉に落とし込む能力が、スムーズなコミュニケーションを実現する鍵となっている。介護職から医師へコミュニケーションを図るときフラット目線で意見を伝えられないことが多い。コミュニケーション力が高ければそういった「壁」を低くできる。

 

コミュニケーション能力の養成は職員の定着促進にもなり、正規職員の離職はこの3年は0名だ。
「患者の支払う額は基本的に全国どこでも一緒です。だからこそ、『人の質』が患者に選ばれるクリニックのポイントとなってきます」(入谷院長)

 

 

 

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