今後人口減少が加速する日本では、少子高齢化に伴いコミュニティの崩壊などが発生し、住み慣れた地域で暮らしを継続することが困難になる地域が増えることが予想される。岐阜県飛騨市は、過疎自治体の再生を目的に地域課題を観光の「資源」とすることで、活気を取り戻す試みが行われている。

 

 

 

 

飛騨市は岐阜県の北部に位置する街。市のほとんどは山林地帯だ。人口は約2万3000人。高齢化率39%以上、日本の30年後の人口構造と近い状態だ。市の農村地区では、耕作放棄地が増え、日本の原風景とした保存されてきた棚田の石垣も管理できなくなると、徐々に地域が衰退しつつあった。

 

そういった状況を改善し、地域に活気を取り戻すことを目的に市は様々な取り組みをスタート。2017年に会員制の「飛騨市ファンクラブ」を発足した。登録するとオリジナルの会員証と名刺を受け取ることができる。会員証や名刺を持っている人は飛騨市で買い物をすると様々な特典が得られる仕組みだ。さらにSNSを使った発信などで会員との交流を深めていった。

 

ファンクラブ設置から3年ほど経過した後、会員の中から「今後はスタッフとして様々な企画を手伝いたい」という人が現れ始めた。飛騨市役所企画部総合政策課の土田憲司氏は「これまでの活動から移住してもらい人口を増やす、というのは難しいことが分かりました。そこで、『関係人口』を増やすことに取り組みました」と語る。

 

飛騨市役所企画部総合政策課 土田憲司氏

 

 

関係人口とは、定住はしていないが、その地域に知人や知り合いがいるなど「縁」を持つ人々を指す。観光客など地域との結びつきが弱い人々と比較して、地域づくりに参加したい、貢献したい、という意向が強い。

 

 

地域通貨で返礼 経済の活性化も

 

関係人口を増やすため、同市は20年から「ヒダスケ!」という制度の運用を開始した。

 

これは専用WEBサイト上で、地域の困りごと(プロジェクト)と、それを解消したいと思うボランティアをマッチングするもの。返礼は地域通貨「さるぼぼポイント」。ふるさと納税が財源となっている。地域でお金が巡っていく仕組みだ。

 

 

現在までに100以上のプロジェクトが行われてきた。それらは、作業だけでなく参加者自身が楽しめるように工夫がされている。

 

壊れた石垣を修繕するプロジェクトでは、外部から専門家を招き「石垣の積み方を学ぶ会」として実施した。また、畑作業のプロジェクトでは区画の一部を参加者の畑として提供。困りごとの解消は、参加者にとってこれまでにない体験をする機会となっている。そして、どのプロジェクトにおいても地域の住民との食事の時間など、交流の機会が設けられている。その地域の「暮らし」の中に深く関わることができる、新たな観光のスタイルとしての側面もある。

 

 

参加者には50~60代の人が多く、「仕事がひと段落し、持っている能力を活かしたい」と思いで参加している。生きがいづくり、介護予防にも一役買っており、リピーターも多く、関係人口が徐々に拡大しつつある。

 

今後は、プロジェクトの実施件数を年間120年ほどまで増やし、さらなる地域活性化を目指す。

 

 

「ヒダスケ」は地域課題の解消を通じて、参加者が学び、楽しめる内容となっている

 

 

 

 

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