<在宅医療事始 ~医療連携、その現状と展望~>

 

「人生の終末期における意思決定、「ACP(Advanced Care Planning)」というものを充分に準備しておきましょうと昨今言われている。ただしそれは、人生の終末期になる前の、大病になった時から、どのような医療をどこで受けたいのかということも含まれる。その延長線上に、治療後のACP、それに準じた意思表示や考えなどが尊重されるべきだ。

 

 

 

高齢者福祉施設などで、患者さんのご家族とお話をする際に、「父(母)は以前から延命処置は希望しないとよく言っていました」と聞くことがある。しかし、単純に「延命」と言っても、強心剤の投与や心臓マッサージ、工呼吸器管理のような、いわゆる生命維持を中心とした治療の開始もしくは継続について考えればよいというだけではない。

 

深刻な病状に至る前の加療、具体的に言えば酸素投与、麻薬の使用といったものにまで、具体的なお話をしているご家族はまだまだ少ない。酸素投与や麻薬の投与は、ご家族の同意によって行われることが一般的だ。しかし点滴となると、それを継続するか否かについては一定の判断基準がない。

 

ご家族の中には「点滴だけはお願いします」と依頼される方も少なくない。しかし果たしてそれが患者さんの苦痛を排除するために役立っているかどうかは、単純には言いきれない。

 

心機能や腎機能が保たれている状態なら、点滴を行なって脱水を改善できれば、血圧も保てて尿も出て、意識レベルを改善させ、体熱感を低下させることに役立つであろう。しかし、さらに病状が進み、腎機能が微弱で、尿も作れないような状態にまでなっていたら、いたずらに点滴だけを継続するのは身体だけではなく、顔面の浮腫も増強させて、その方がご家族に見せる最後の表情を残念なものに変えてしまうかもしれない。

 

 

 

医療従事者ではない方に対して、終末期における点滴とその副作用について説明をすることは、決して容易なことではない。だからこそ、我々は、これについての明確な考えを持ち、ACPを決定しようとする方々からの問いかけや相談に、きちんとした意見を述べられるようにしておくことが必要ではないだろうか。

 

点滴と同様に、人生の終末期を迎えた患者さんのご家族に対して、ACPとは何なのかを理解していただき、よりよい終末期に対する意思決定をサポートできるよう、我々にも準備が求められている。

 

我々は、今一度、謙虚に、ACPに対して向かい合う必要がある。

 

 

 

 

髙橋 公一

医療法人社団 高栄会  みさと中央クリニック

埼玉医科大学病院 第一外科入局。消化器・一般外科、心臓血管外科、呼吸器外科、乳腺内分泌外科、移植外科、脳神経外科、小児科などを経験。2001 〜03 年に外科留学、移植免疫学を学ぶ。帰国後、埼玉医科大学に復職し、チーフレジデントを勤める。その後、池袋病院外科医長、行田総合病院外科医長を経て、08 年みさと中央クリニック開院。17 年に法人化。

 

 

 

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