医療法人かがやき「総合在宅医療クリニック」(岐阜県岐南町)は同町を中心に、車で30分圏内の範囲で在宅医療を提供している。「患者の人生を支えるのは医療だけでない」(市橋亮一理事長)という考えの下、地域連携での食支援や音楽療法士の訪問などにより、患者の生きがいを支援する取り組みを行っているのが特徴だ。

 

クリニック外観

 

 

紹介業利用せず研修費用に還元

 

患者数は2020年時点で267人。医師の人数は常勤が6名、非常勤が11名。24時間365日対応可能な体制だ。患者の年齢は0~100歳以上までと幅広い。昨年春には医療的ケア児・重症心身障害児向けの医療型短期入所施設を開設し、さらに機能の充実を図った。

 

市橋理事長は、「地域に足りないものを提供することを常に考えてきました」と語る。そのためクリニックには医師、看護師に加えて、コメディカルとして理学療法士、言語聴覚士、管理栄養士、歯科衛生士などほかの在宅クリニックでは珍しい職種も在籍。

 

とりわけ珍しいのが音楽療法士の存在。プロヴァイオリニストで音楽療法士の資格を持つ職員が患者を訪れ、30分ほどの時間演奏したり一緒に歌を歌ったりする。音楽を中心としたコミュニケーションで患者の気持ちに好影響を与える。

 

 

人生の楽しみとして重要な意味を持つ食。「口腔状態は身体の全てに関わってきます。多職種連携のレベルが最もよく現れる部分です」と市橋理事長は語る。

 

市橋亮一理事長

 

 

クリニックでは歯科衛生士、管理栄養士、言語聴覚士がチームを組み、「食楽支援」と銘打ち、食べる楽しみを最期まで支えていく。歯科衛生士は医師に同行する。口腔に関して気になること、心配なこと、など患者の思いをヒアリングし、それに基づき口腔ケアの計画を立てる。必要な場合には地域の歯科医師や介護職などとも連携し、地域ぐるみで口腔ケアを実践する。「いわば地域の『食のケアマネジャー』のような存在です」(市橋理事長)。

 

クリニックに様々な技能を持った職員が在籍することで、幅広いニーズに対応可能としている。「皆勉強が好きなので、1人の職員が色々な資格を持っています」(市橋理事長)。職員の学びを支援するため、常勤職員には年間20万円、非常勤には10万円の研修費補助制度を導入している。学会参加費など業務に直接役立つことのほか、語学など本人の将来のキャリアにつながるものであれば利用できる。当初ドライバーとして採用された職員が勉強を続け、看護師に転身した事例もある。

 

職員が学べる環境を実現するための鍵が、計画的な採用を行うことにあるという。
「今すぐは無理でも1年後には採用できる人達を集約した『ウェイティングリスト』を作成しています」(市橋理事長)。人員が不足した時から採用活動を始める場合と比較して、応募者の適性を焦らず見極めることができる。

 

職員の人数は、仕事量に対して常に「リッチ」になるように調整。すると無理なく働けるために離職が減る。開業から12年で看護師の離職は3名に留った。

 

低い離職率は患者へのサービスの質向上、利用者の増加へとつながる。その評判が伝わることで採用への応募者も増えた。そのため、紹介会社を使わなくても採用ができているという。「紹介会社を利用した場合、紹介料1割で240万円ほどかかります。クリニックではその分を研修費に回していることになります」(市橋理事長)。

 

サービスの向上が経営を安定させ、それが採用につながり、人員に余裕が生まれることで教育に力を入れることができ、さらにサービスが向上する。この好循環によって、患者が最期まで幸せに暮らせる地域を実現していく。

 

 

 

様々な専門職が在籍することで幅広いニーズに対応する

 

 

 

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