地震発生時の利用者を守る対応は

 

ある社会福祉法人の理事長から「災害対策(震災)のBCPをチェックして欲しい」と依頼を受け、かなり長文の〝読み物〟に目を通しました。「現実にはあまり役に立ちそうもない」というのが正直な感想でした。

 

そもそも一般企業でBCPとは震災発生後の企業活動の継続対策であり、災害発生時の防災対策と区分できますが、介護事業(特に施設)においては防災対策と業務継続対策に切れ目はありません。つまり防災対策がきちんとできていなければ、BCPもダメということになります。

 

BCPに着手する前に、もう一度防災対策を一から見直さなければなりません。

 

 

■揺れたその瞬間どう行動すれば良いか?
理事長には「災害発生場面を職員が自分のものとして具体的に想定して、みんなで知恵を出してみた方が良いのでは」とアドバイスしました。試しに、最も初歩的な対策「地震発生時の身を守る行動」のマニュアル化を勧めました。

「大地震で大きな揺れが起きました。どうしたら良いですか?」と小学生に聞けば「机の下に入って揺れが収まるのを待ちます」と答えが返ってきます。落下物から頭を守るための初歩的な対策です。

 

では、施設で突然大きな地震を感じたらどのように利用者を守ったら良いでしょうか?実は東日本大震災の半年後、震災対策マニュアルの見直しをしている時に、職員に「揺れた瞬間あなたはどう行動したか?」とアンケートを取ったら、ほとんどの職員が「落ち着いて下さい」と声かけをしました、と答えたのです。

 

理事長に聞いてみると2ヵ月に1回災害対策の会議をやっているそうなので、「一度職員みんなで話し合ってみてはどうですか?」と提案してみました。「山田さんも是非来てください」と誘われたので、災害対策会議に参加しました。

 

 

■災害対策会議の話合い
「大きな揺れを感じたらどのように利用者の身を守る行動をするべきか?」という課題で、話し合いが始まりました。しかし、いきなり問われても困ります。なぜなら、大きな揺れが起こった時自分がどこで何をしているか分からないからです。早朝離床介助でベッドから車椅子のトランスをしているかもしれませんし、午後の入浴介助で利用者が浴槽に居るかもしれません。

 

そこで、職員に「入浴介助中、利用者が浴槽に居る時に大きな揺れを感じたらどうすれば良いか?」を話し合ってもらいました。

まず、若い男性職員が「浴槽からすぐに引っ張り上げます」と意見を言います。隣に居た看護師が「立っていられないくらい揺れているんだから、浴槽から引き上げられる訳ないじゃない」と水を差します。

 

 

結局「揺れた瞬間、浴槽の縁から利用者を支えて揺れが収まるのを待ち、揺れが収まってから他の職員を呼んで引き上げる」という対応になりました。

 

 

■「レク中に揺れが起きたらどうする」
このように、揺れたその瞬間施設内のどこでどんな業務をしているか、様々な場面を想定しておくべきです。

地震発生場面だけでも、「デイルームで見守り中」「居室で身体介護中」「トイレ介助中」「入浴介助中」「車椅子移動中」など、多くの場面で職員が取るべき行動を考えなければなりません。また、「揺れ始めた時」「揺れが収まった時」「余震が続く中で」と、時系列で3段階に分けて行動を決める必要があります。

 

デイの職員が「デイルームでカラオケレク中に揺れたらどうしたら良いか?」と投げかけてきました。ある職員が「防災頭巾を取りに行く」と言いましたが、「それじゃ間に合わないわね」と却下されてしまいました。まさか、車椅子の利用者に「机の下にもぐれ!」という訳にもいきません。最終的には、「座布団にゴムバンドをつないで椅子の背もたれに括り付けて、すぐに頭に被ってもらう」という対応になりました。

 

色々な場面を想定して意見を出し合うと、知恵は出て来るものなのです。まず、自分がその場面に直面した時に何をしたら良いか、みんなで知恵を出すところから始めなければなりません。

 

 

 

安全な介護 山田滋代表
早稲田大学法学部卒業と同時に現あいおいニッセイ同和損害保険株式会社入社。2000年4月より介護・福祉施設の経営企画・リスクマネジメント企画立案に携わる。2006年7月より現株式会社インターリスク総研、2013年4月よりあいおいニッセイ同和損保、同年5月退社。「現場主義・実践本意」山田滋の安全な介護セミナー「事例から学ぶ管理者の事故対応」「事例から学ぶ原因分析と再発防止策」など

 

 

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