<在宅医療事始 ~医療連携、その現状と展望~>

 

20年前、たとえば人工呼吸器はかなり大きな機械であり、自宅で導入するのは不可能だった。
技術の進歩により医療機器は当時に比べてかなり小型化し、センサーの精度も上がり、バイタルサインのモニターも広く一般家庭にまで普及するようになった。 呼吸器管理ひとつとっても、人工呼吸器だけではなく、夜間無呼吸症候群に対するCPAP (持続陽圧呼吸療法)、ネーザルハイフロー (高流量の酸素を投与する方法)など選択肢が増えてきている。

 

心電図も、今は在宅や高齢者施設で療養している患者さんの胸元に専用の機械を取り付けるだけで、常時その情報がスマートフォンに送られ、ドクターが自宅で患者さんの状態把握ができるようになった。

 

 

こうした医療機器の発達で、より重症な患者さんを在宅や高齢者施設など病院以外の場所でも診ることが可能になった。

 

残された人生を最もその人らしく過ごしていただくために、我々は最善を尽くすのだが、施設の種別によっては24時間看護師がその場にいない施設もあり、在宅で医療従事者ではない家人のもとで療養している患者さんもいる。そうすると、行える医療行為の選択肢に差が出てくることがある。

 

 

特にここ数ヵ月、新型コロナウイルス感染症をコントロールしきれていない状態において、各高齢者施設で行える医療的ケアの違いを考慮して治療方法の選択にあたる必要が出てきている。

 

具体的に言うと、サ高住では看護師がいないので、訪問看護師が点滴や酸素投与、コロナの治療薬の内服を行う必要がある。ただし、看護師がいない時間帯にはヘルパーの判断で医療的な行為はできないので、在宅酸素の投与量を上げることすらできない。一方、外時間看護体制の有料老人ホームであれば今言った全てのことが難なく行える。

 

第7波が猛威を振るっていた時期には、病院はかなりひっ迫した状態で救急搬送のお願いをしても、「点滴、酸素投与、抗ウイルス薬の内服ができているのなら、施設内で診てください」と言われることも多かった。しかし、看護師が常駐していない施設で、その状態を継続しなければならないところでは、いよいよ患者さんの酸素濃度が下がってから救急搬送され、入院したときには治療に難渋することも少なくなかったのだ。

 

 

これからの有料老人ホームまたは在宅診療医は、より医療的ケアに特化したサービスを充実させていかなければならないのだろうか。今回のことを教訓に、医療介護体制についてより細かな部分まで、活発な議論がなされることを期待する。

 

 

 

髙橋 公一

医療法人社団 高栄会  みさと中央クリニック

 

埼玉医科大学病院 第一外科入局。消化器・一般外科、心臓血管外科、呼吸器外科、乳腺内分泌外科、移植外科、脳神経外科、小児科などを経験。2001 〜03 年に外科留学、移植免疫学を学ぶ。帰国後、埼玉医科大学に復職し、チーフレジデントを勤める。その後、池袋病院外科医長、行田総合病院外科医長を経て、08 年みさと中央クリニック開院。17 年に法人化。

 

 

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