東京都国立市で、地域に根差した医療・介護を手掛けている医療法人社団つくし会新田クリニック。1990年の開院時より、外来と並行して在宅医療を手掛けてきた。「看護師が重要な役割を果たしつつ、認知症グループホームやサービス付き高齢者向け住宅などとともに超高齢社会、多死社会を支えていく」と語る新田國夫理事長に話を聞いた。

 

医療法人社団つくし会
新田クリニック
新田國夫理事長

 

 

 

地方では外来が減少 訪看との連携に活路

 

――新田クリニックにおける在宅医療について教えてください。

新田 当院は、国立市に密着して総合医療を提供していますが、認知症疾患医療センターでもあることから、患者には高齢者や認知症の人が非常に多くいます。そうした中で、在宅医療を柱の1つに据えています。

 

当院のもう1人の医師が中心となって訪問診療を行う中で、重要な役割を担うのは看護師。4名の看護師が、在宅の急性期の患者のもとへ日々駆けまわっています。クリニックのほかに、訪問看護や居宅介護支援、看護小規模多機能、GH、サ高住なども運営しており、それぞれの介護事業所のスタッフと連携しながら要介護高齢者を支えてきました。

 

 

 

――加速する少子高齢化に際し、どのような医療を提供していくのでしょうか。

新田 今後、85歳以上の独居高齢者が増加することで、いかにして最期まで診るかが課題となってきます。在宅医療のニーズが増える中、心不全やがんなどの疾患のある人が1人で生活していくために、どのような支援ができるかという視点です。

 

このコロナ禍でも、当グループの看多機は9床をフル回転させて看取りを行ってきました。病院とは異なる生活の場なので、家族も面会でき、最期まで寄り添ってもらえました。サ高住も要介護の入居者が増えており、サービスを増やしていきたいところです。

 

病床を「川上」、受け皿となる地域を「川下」とする理論がありますが、今後の在宅医療においては、おそらくこれが逆転していくでしょう。後期高齢者に対して行うべきは「治す医療」ではなく、「治し支える医療」です。病院でできる医療が少なくなり、在宅でできることが多くなる。例えば、食事・口腔に関することや、肺炎の治療などです。

 

 

 

――現在の在宅医療の資源で、多死社会を支えていくことについて。

新田 高齢者が病院に通えなくなり、自ずと外来病院が減少する。この現象はすでに地方で始まっています。開業医が在宅医療も手掛けていく必要がありますが、まだまだそうした考えにはならないところが多いでしょう。

 

しかし、これは訪問看護との連携に活路があります。医師を増やすための施策が行われていますが、医師だけを増やすのではなく、看護師とのマッチアップで在宅ニーズに対応していくべきでしょう。他方で、看護師のほとんどが病棟看護師であるという現状を踏まえ、在宅医療・介護における看護師の給与体系や働き方も議論していく必要があります。

 

 

 

――地域医療構想における病床再編について見解を聞かせてください。

新田 現状では、「地域病院構想」になっていると言えます。本来は病院から始めるのではなく、地域で生活する人のニーズから始まらないといけないものだったでしょう。中でも民間病院には都道府県の介入が及ばず、病床機能分化・再編も難しい状況です。

 

一方、在宅医療は病床機能などのしがらみがなく自由なので、臨機応変にニーズに対応できます。例えば国立市には、人口8万人都市にも関わらず大病院がありません。専門病院もほとんどなく、中小病院の代わりに看多機が機能しています。

 

 

 

――国立市の取組を踏まえた、今後について。

新田 国立市では、19年に市独自の「国立市地域医療計画」を策定しています。かかりつけ医を中心とした、地域住民目線の構想です。コロナ禍以前より20名ほどのワーキンググループが市内で複数ヵ所発足しているほか、保健師が担当となって在宅支援室も増やしています。介護事業者や訪看、行政、ケアマネなどが情報提供会議をしているところに、医師も参加してきました。

 

地域で住民を支えていくためには、安易に病院にかからないよう、地域のかかりつけ医や看護師がしっかり見極める必要がります。合わせて、国民の意識も変えていかなければならないでしょう。

 

 

 

 

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