7月24日、大阪府吹田市で不発弾処理作業が行われ、作業現場から概ね半径300メートルの警戒区域内の全住民・事業所が約4時間にわたり避難した。避難対象となった特養の当日の様子について、避難の支援に携わった人たちに話を聞いた。

 

 

 7月24日、16施設が協力 52名を無事搬送

 

不発弾が発見されたのは4月27日。6月上旬に処理作業の日程と避難対象範囲が決定した。エリア内にある特養「吹田千寿園」(以下:千寿園)の入居者52名は、車で10分ほど離れた市の総合福祉会館へ避難することになったが、これだけの人数を千寿園が保有する車両だけで運ぶのは時間がかかることが想定されたため、当初は市がバスをチャーターすることを検討していた。

 

一方、吹田市内21の特養のうち20施設が加盟する任意団体「吹田地区特別養護老人ホーム連絡協議会」(以下:協議会)では、千寿園が避難対象区域に入ったことを受け「協議会として避難を支援しよう」と6月17日の施設長会議で決定した。協議会の山本智光代表(いのこの里施設長)は、「警戒区域内には一般の市民も多く住んでいます。市には市民の避難対応に専念してもらい、千寿園入居者の避難は協議会で支援する形で分担することを市に提唱しました」とコメントする。

 

 

当日は、16施設から32名と12台の車両が集結し、千寿園のスタッフ・車両とともに入居者の搬送を行った。

協議会では3ヵ月に1回の施設長会議、月に1回の生活相談員ミーティングなどを実施しており密な関係が構築できていたので、事前の打ち合せはZoomで1 回行ったのみ。むしろ、重要視したのは「準備よりも当日の動き」だという。作業の進捗次第では、施設に戻れる時間が大幅に遅れる可能性もある。当日、状況に合わせて臨機応変に行動できるよう、当日はLINEワークスでやりとりを行った。

 

 

新型コロナが避難にも影響

 

また、新型コロナウイルス感染症も避難に大きな影響を与えた。

 

当初、避難の支援には19施設が協力することを表明していたが「自分の施設内でコロナが発生し、人を出せる余裕がなくなった」として3施設が直前になって協力を取りやめている。また、感染リスク軽減のため、1台の車両に載せる入居者は2名に制限したため避難先との往復回数が増えた。
「コロナの新規陽性者が急増し始める前でしたので、何とか協力することができました。大阪府だけで1万人以上の新規陽性者が確認されている今の時期なら、とても無理だったでしょう」(社会福祉法人秀明会吉久正規業務執行理事)

 

 

入居者が避難先に滞在していたのは約4時間。食事を摂った以外は静かに過ごしていた。環境が変わったり、普段と違う人が対応したりすることで、不穏になる可能性が高い入居者については、千寿園のスタッフが同乗するなどして対応したこともあり、特に大きな問題は発生しなかった。

 

「今回の件で、地域の介護事業所で日頃から密な連携しておくことの重要性を改めて実感しました。こうしたネットワークづくりを行う必要性を多くの介護事業者に知ってもらいたいと思います」(メヌホット千里丘弓場美幸施設長)

 

なお、今回の避難支援に対して8月31日、吹田市長から協議会に感謝状が贈られた。

 

吹田市長(右から4人目)からの感謝状贈呈の様子

 

 

 

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