東京都八王子市を拠点に多摩エリアで事業展開する医療法人社団永生会グループ。外来診療から在宅医療、介護、保育まで地域のニーズに対応している。医療・介護の垣根なく地域包括ケアシステム構築に取り組む、安藤高夫理事長に話を聞いた。

 

 

医療法人社団永生会
安藤高夫理事長

 

 

電子カルテ導入に議論展開 公的補助で7千億削減

 

 

――グループについて教えてください。

安藤 永生会のほかに医療法人社団明生会、社会福祉法人高生会、十字会ケアステーションから成ります。全体では計31事業所を運営。永生会・明生会合わせて、医師が276名(うち常勤97名)、看護師が833名(うち常勤704名)在籍しており、許可病床数は計1196(2022年8月24日時点)、在宅の患者数は約1900名です。

 

創立より在宅医療を手掛けてきた中で「地域包括ケアシステム」という構想が生まれ、認知症グループホームや地域リハビリ支援センターなどを付加し、機能強化型在宅療養支援診療所も拡大。「訪問診療」といった概念もまだない30年ほど前より、地域戦略を描いて往診を行ってきました。

 

 

 

――地域密着で医療・介護を提供するにあたり、連携はどのように。

安藤 東京都病院協会が取りまとめを行う医療情報基盤「東京総合医療ネットワーク」を活用し、他医療機関と連携しています。また、これとは別に、当グループを利用する全患者の家族データまでまとめたデータベースを構築したい、という考えは10年以上前よりあります。年齢や疾患、要介護度に加え、家族構成まで網羅したデータがあれば、地域住民一人ひとりに合ったタイミングでサービス提案が可能になります。

病院DXの取り組みでは、電子カルテや薬剤情報管理システムを活用。また、介護DXについては、1日に開設した特養「明日に架ける橋」にて、入居者の様子を映像で確認できる「HitomeQ」と「眠りSCAN」の活用を社会福祉法人善光会と提携して実証し、ノウハウの水平展開を目指します。

 

 

 

――電子カルテ導入に関する公的補助について、議論を展開されています。

安藤 電子カルテの導入および維持に係る費用について、公的補助の仕組みが作れないかと問題意識を持っていました。そこで、「未導入病院および導入病院の両方への公的補助」「未導入病院のみの公的補助」の2パターンでシミュレーションを実施。

 

例えば前者では、未導入病院3449施設でのクラウド型電子カルテ導入に加え、導入病院4430施設におけるオンプレミス型電子カルテの更新に掛かる費用を合計すると約8058億円と想定されます。一方、国が電子カルテを開発した場合は、開発費にシステム維持費と未導入病院のハード代を加えると、約957億円と想定。その差分約7101億円の医療費削減効果の可能性が示唆されます。

 

 

 

――地域の介護事業者との連携はどのように図っていますか。

安藤 八王子エリアは、比較的事業者同士の連携が図れていると感じます。八王子介護保険サービス事業者連絡協議会は、全国老人保健施設協会副会長の平川博之氏が理事長を務めていますし、陵北病院の田中裕之院長が代表を務める八王子市高齢者救急医療体制広域連絡会により、在宅と病院の連携も活発です。加えて、元八王子市医師会長の孫田誠三先生が理事長を務める八王子市民のための医療と介護連携協議会は、医療と介護に係る全ての職種の協働を掲げて活動しています。

そうした連携体制もありつつ、感染制御や健康指導などを伝える専門的な医療者の派遣、健康相談会の共同開催などを通した独自の連携も図っています。

 

 

 

――日本におけるかかりつけ医機能の強化・推進に対する考えを聞かせてください。

安藤 4つの方法が考えられます。まず留意すべきは「日本の診療所は、院長の専門科をコアとして広がっている現状」です。そのため、既存の体制では、①「専門領域を持ちながらかかりつけ医の機能を持つ医師を増やす」ことが重要です。

 

2つ目はイギリスにおけるGPのようなホームドクターを育成する、②「『かかりつけ医を育成する科』のようなものを設けていく」こと。この場合には併せて「点数を設定しインセンティブを働かせて促す仕組み」も必要です。これら2つを選べるようにしていくのが良いのではないでしょうか。

 

 

他方で、③「地域の中小病院がかかりつけ病院の役割を果たす」方法や、地域医療連携推進法人のように④「地域ごとに各医療機関が連携してかかりつけ医として機能する」ことも可能でしょう。地域医療構想の議論で提唱される「病院完結型から地域完結型へ」を当法人では実践していますが、他法人と連携しつつ、バランス感覚をもって共存共栄していきたい考えです。

 

 

 

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