社会福祉法人悠生会(福岡県大野城市)の「特別養護老人ホーム悠生園」(同)は高まる医療ニーズへ対応するため、夜間帯の看護師配置や医療機器の充実に加えて、嘱託医を始めとした地域の医療機関などとの連携を強化。病院で治療を終えた高齢者を地域でスムーズに受け入れられる体制を整えた。

 

 

嘱託医と連携密に ケア記録即時共有

 

設立は老人福祉法が施行された1963年で、九州では最初、全国でも早い段階で特別養護老人ホームを開設した法人だ。創立者は医師の田中多門氏で認知症の音楽療法の開発に関わった人物。

特養のほか、デイサービス、居宅介護支援事業所、地域包括支援センターを運営している。悠生園は210床、平均要介護度3.8の特養。現在の待機者数は200名近くとなっている。

 

創立者が医師であることから、従前より医療的な処置を必要とする高齢者を受け入れてきた。看護師を夜間帯にも配置し、24時間体制で医療対応可能なことに加えて、酸素ボンベ、カテーテル、インスリン注射などの医療機器も自前で取り揃えている。

 

数年前から一層そうした高齢者の受け入れを進める方針とし、現在は入居者の4分の1程度が経鼻経管栄養、インスリン注射、胃ろうなどの対応が必要な人となっている。

 

地域連携部の西方隆司部長は「退院は可能だが経鼻経管栄養の管理が難しいという理由で、治療を終えても地域に戻れない人が多くいます。相談員として医療ニーズの高まりを感じていました」と話す。地域の特養などでは医療対応がネックとなり、また老健でも医療ニーズの高い高齢者の受け入れが進まない実情があるという。同時に、「特養でも入居者を選ぶ時代が終わりつつある」(西方部長)という認識から、様々な容態の高齢者の受け入れを進めることとなった。

 

 

西方隆司
地域連携部長

 

 

最初は現場職員、特に看護師から「急変時の対応などリスクが大きく不安」といった声が挙がるなど、特に精神的な負担感が増すことが課題となった。

 

そこで、嘱託医との情報連携を強化。施設の介護記録システムのライセンスを提供し、嘱託医は自分のクリニックや自宅などからでも記録の確認ができる。施設で勤務していない時でもリアルタイムで入居者の様子が確認可能で、容態に変化が見られた場合は即座に施設職員に連絡を取る。

 

「医師がいつでも入居者の容態を把握している」ということが現場職員の安心材料となり、負担感を軽減している。嘱託医にとっても、クリニックの集患が難しくなる中で悠生園での取り組みが地域の信頼につながり、新たな患者を獲得することができている。

 

 

各種医療機器や嘱託医用のライセンス費用など、医療強化に際してコストも増す。それを補うのがショートステイだ。施設では専用の6床に加えて、入院した人の空床を利用してショートステイを受け入れる。専用床の稼働率は年間100%、同様に空床利用は90%と高い水準となっている。

 

地域連携部が医療機関のソーシャルワーカーと密にやり取りし、医療機関の入退院の状況や、施設でどの月に何名ほど入院する人がいるか、といった情報に基づき、ショートステイの受け入れ計画を立てることで稼働状態を維持している。

また、地域の居宅介護支援事業所のケアマネジャー40~50名と密な情報共有を行っていることも重要な要素だ。ショートステイは利用者の情報が少なく、対応が難しい面もあるが、それが逆に介護職のスキル向上に結び付くというメリットもある。

 

 

こうした取り組みで、悠生園は地域の事業者などからも信頼を得ている。年間の紹介件数は老健から20件、病院から50件、居宅介護支援事業所からは50件。医療面の負担は大きいが、こうした付き合いのある法人などから紹介があることのメリットが上回っているという。

 

 

医療の対応に強みを持つことで、地域の法人から信頼を得ている

 

 

 

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