コロナ収束見え財政再建に軸足
2024年の介護報酬改定に向けた国の議論が本格化しています。私自身は、24年改定はマイナス、それも15年並みの大幅マイナス改定もあると予測しています。
21年改定が行われた当時は、新型コロナウイルスの感染状況の先行きが全く見通せない状況であり、国もコロナ対策にジャブジャブとお金をつぎ込んできました。
しかし、24年改定時には、コロナは既に収束ないし収束がかなり見えてきている状況になっていると思われます。その中で国が「財政の立て直し」に動くことは自然な流れと考えられます。40年に向けて、介護については、
①人材の「常勤・専従」主義の見直し
②健康寿命の延伸
③DX推進
の3つが施策の大きな柱になると思われます。介護事業者には、マイナス改定の可能性を踏まえながら、それに向けた準備を進めていくことが求められます。
「24年改定が具体的にどのようなものになるのか」については、21年改定の中に既にエッセンスとして散りばめられています。
介護事業「LIFE活用」不可欠に 24年改定 15年並みの大幅マイナスも
21年改定では①感染症・災害への対策の強化、②地域包括ケアシステムの推進、③自立支援・重度化予防の推進、④介護人材の確保・介護現場の革新、⑤制度の安定性・持続可能性の確保、が大きな方向性として示されました。
この中で一番重要なのは③です。そのために国は科学的介護の実践の必要性を打ち出し、LIFEの活用を推奨してきました。実際の報酬は、LIFEを活用しなくてもそれほど経営的には影響が出るものにはなりませんでしたが、次回はどうでしょうか?
国の方向性にしっかりと添っている介護事業所をきちんと評価しようと、LIFEを活用していない事業所の報酬が大幅に引き下げられる可能性もあります。
LIFE要件の加算引き上げも
一方で、LIFE活用に関する加算は大幅に引き上げられる可能性もあります。
国は介護のエビデンスを医療並みにしたいという思惑があります。そのためには少しでも多くの介護事業者がLIFEに真剣に向き合う報酬体系としていくでしょう。21年改定で新設された、LIFE活用が算定要件となっている各種加算は大幅な引き上げも考えられます。その一方で、基本単位の引き下げの可能性もあります。
また、「自立支援加算」とでも呼ぶべき新たな加算が生まれることも予想されます。例えば、単なる機能訓練・口腔機能訓練ではなく、様々な取り組みを一体的に行って初めて算定できる加算です。それを算定しないと、経営が成り立たないほどに重要な加算となるかもしれません。
さらにアウトカム評価を重視する方向性も強まるでしょう。排泄支援加算など、21年改定で設けられた加算の中には、大幅な引き上げが考えられるものもあります。
このように、24年以降の介護事業は「LIFE活用」に生き残りがかかっていると言っても過言ではありません。しかし、今の状態で「LIFEを活用しろ」といっても入力の手間がかかるなど様々な課題もあります。
LIFEにしっかり向きあえるように、DXの推進などで働き方改革を進めていく必要もあるでしょう。

一般社団法人全国介護事業者連盟
斉藤正行理事長