長谷工グループで、30年以上の介護事業実績を持つ長谷工シニアウェルデザイン(東京都港区)。長谷工シニアホールディングス、センチュリーライフ、生活科学運営の3社合併・商号変更から1年が経ち、運営施設のブランド名も変更された。改めて事業を「デザイン」すべく取り組む野本久社長に話を聞いた。

 

 

長谷工シニアウェルデザイン
野本久社長

 

 

ホテル雅叙園に入居相談サロン

 

 

――10月より、施設のブランド名が変更されました。

野本 介護付有料老人ホームおよびサービス付き高齢者向け住宅を「ブランシエール」、認知症グループホームを「ウェルミー」とし、さらなるサービス品質と入居稼働率の向上に取り組んでいます。企業理念に掲げたのが「心地よい『間』をデザインする」。当社は、一人ひとりにとって心地よい「空間」「時間」「仲間」をデザインしながら、30年以上運営してきたという自負があります。この「間」の概念は人材育成などに落とし込まれ、現場でも重んじてきました。

 

 

 

――人材採用・育成の取り組みは。

野本 合併を機に各社バラバラだった給与体系を統一し、将来設計がしやすいよう制度の見直しも行いました。社員には「自分の人生もデザインする」ことを大切にしてもらうべく、現場職員からリーダーや事業所長、エリア長、さらには役員も目指せるキャリアプランを整備。また、新入社員と同じように中途社員の入社式も行い、横のつながりが持てる機会を設けました。こうした取り組みが奏功し、正社員の離職率も一桁に近づくまで改善。適正な業務・人員配置を精査し、派遣社員も全社で10名ほどまで減少しています。

 

介護の仕事は、本当に人が命。今後もこれまで展開してきたエリアを中心に運営していきたいため、新エリアへの進出などは今のところ考えていません。首都圏のニーズを吸い上げながら堅実な運営をしていく方針です。

 

 

 

――グループの強みを活かした特色とは。

野本 例えば、長谷工コーポレーションが扱う土地情報を活用して当社で有老を運営することもあり、規模感を活かした新しい目線での展開が可能になっています。また、グループで運用を開始した私募REITを活用している施設も1棟あります。

ソフト面では、BCP対策として、災害時に建物の診断を行う「応急危険度判定士」の資格を持った長谷工グループ社員が、万一の時には速やかに派遣されます。災害発生時、施設に駆けつける担当者がグループ全体で任命されており、一丸で現場支援を担います。

 

 

 

――今後の開設計画を聞かせてください。

野本 来年開設予定で2件着工しており、1つは台東区に5月開設予定の介護付有老「ブランシエール蔵前」(自立型124戸、介護型30戸)、2つ目は目黒区に12月開設予定の介護付有老「ブランシエール目黒」(自立型52戸、介護型36戸)。蔵前の施設はオフィス棟や賃貸フロア、保育園などから成る複合施設の9~17階部分です。なお、期間限定でこの2施設のための完全予約制の入居相談サロンをホテル雅叙園東京に開設。今年5月に運営開始し、すでに多くの問合わせが寄せられています。

 

 

 

――「自立からの入居」が御社の特色。この層への訴求方法は。

野本 70代は、「1人で家を維持する不安」や「健康への不安」などライフバランスが大きく変わる時であり、10年、20年後をどう過ごそうかと考える人が増えています。そうした人々に情報が届くよう、TVCMや広告、セミナー、社員・関係者による紹介などをしながら、広く情報を発信。自立のうちから入居し、介護が必要になっても、最期の時にも、安心して住み続けられる場所であることを伝えたいと思っています。

 

 

 

――入居者へのサービス向上のための新しい取り組みとは。

野本 3つあり、1つ目は「顔の見えるケアプラン」。これは、当社でかねてより集めてきた入居者のふとしたエピソード「にやりほっと」をベースに、世界でたったひとつのその人の「顔」が見えるようなケアプランを作り、その人らしさを叶える取り組みです。

 

2つ目が、「笑い学」の研究。これは福島県立医科大学との連携によるもので、心身がより健康になると言われる「笑い」につながる効果的なサービスメニューの開発・提供を行っています。「笑い」には幸せホルモンの分泌が盛んになる効果があると期待されているので、そのエビデンスを取得するべく、まずは数事業所から「笑いヨガ」を提供開始。職員間で笑いヨガインストラクターの資格取得を広めつつ、全事業所で展開していきます。

 

そして3つ目、今月より社内ラジオも開始します。入居者の「自分時間」に寄り添うエンターテイメントとして、月2回入居者限定で配信予定です。名前は「長谷工シニアウェルラジオ」。入居者に主役として出演してもらい、人と人とをつなぐ時間を目指します。

 

 

「ブランシエール目黒」のラウンジ完成予想。吹き抜けで解放感ある空間

 

 

 

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