新卒が入社して半年、入所施設なら夜勤で独り立ち、通所施設なら送迎に1人で行くようになっている頃だと思います。指導計画通りに順調に進んでいますか?

 

新人教育において絶対にやってはならないのは「職人的指導」だと、本連載でも何度かお伝えしてきました。〝背中で教える教育〞、〝経験と勘に頼った指導〞から脱却しなくてはなりません。基本から応用に進むように手順を決め、座学とOJTに分けて効率的、効果的に指導するのが重要でした。しかし、いくらプログラムを作りこんでも、実際に指導するトレーナー役がそのことを理解していなければ台無しになってしまいます。

 

 

そこで、愛知県のある法人では、毎年下期に「指導者研修」を実施することにしました。対象は入社して2〜5年目の職員。例えば、次のようなことを行っています。

 

 

まずは「リーダーになるメリット」を

 

■指導者になるメリット
指導者になることをネガティブに受け止める人は多くいます。確かに仕事が増えるということはありますが、人に指導するには、自分のしている業務を整理して言語化し、噛み砕いて説明しなければなりませんから、より業務を深く理解し、自分自身のスキルを向上させるきっかけになります。そのため、この法人ではまずリーダー予定者に「メリット」から伝えることにしています。

 

 

■指導者の役割
指導者の役割は、ただ教えてスキル向上をサポートするだけではありません。「習得状況の把握」「指導計画の見直し」「不安の解消」のほか、それらの情報を上司やほかのスタッフに発信し、協力してもらわなければいけません。指導者研修では、テーマごとの具体的な動きを伝えます。
例えばこの法人では、毎月、リーダー会議で、下記のフォームによって指導の進捗報告をすることを義務付けています。報告内容から、個別に今後の対策を練るのです。議論する時間は1人5分程度ですが、とても成果が上がっています。

 

 

■面談の方法
指導上もっとも大事なのが、トレーナーと新人との面談です。研修では、面談手順の指導だけでなく、ロールプレイまで行います。内容は、
①アイスブレイク
②まず長所、できていることを褒める
③チェックリストでの評価から、習得が遅れているところ(目標)を共有する
④②の項目の指導日(時間)を決める
⑤不安点を聞き出す

 

また、指導が不慣れなトレーナーの場合には、面談に上司が同席することもあります。この法人では、以下のようにルールを決めています。
【面談頻度】月1回ユニット会議の前
【面談時間】20分程度
【面談者】トレーナー
【ユニットリーダーの同席】トレーナー初心者は3回目まで同席、トレーナー経験者は2回に1度同席

 

 

■対象者別の指導のポイント
介護業界では、新人は学校を卒業したての人材ばかりではありません。年上の新人に指導することもよくあります。年下が先輩でも謙虚に聞いてくれれば良いですが、うまくいかないこともあります。また、相手が外国人ということもあるでしょう。研修では、想定される対象者ごとに指導のポイントや注意点を伝えています。

 

例えばこの法人では、50代以上で無資格未経験の中途採用者が多いため、以下のようなことを伝えています。
□年上であることに配慮した言葉遣いで指導する(敬語をしっかり使う)
□熟年者にありがちな「落とし穴」をあらかじめ伝える(知ったかぶりしてしまう等)
□介助方法の間違いを正すときは、他のスタッフのいないところで行う
□面談ではできる限り上長を同席させる

 

 

いまの時期は、新人のスキルに差がでてくるころです。裏を返せば指導者のテクニックに差が出る時期とも言えます。この時点での反省を次に活かせるように、しっかりと準備しましょう。

 

 

 

糠谷和弘氏 代表コンサルタント ㈱スターコンサルティンググループ
介護事業経営専門のコンサルティング会社を立ち上げ、「地域一番」の介護事業者を創り上げることを目指した活動に注力。20年間で450法人以上の介護事業者へのサポート実績を持つ。書籍に「介護施設帳&リーダーの教科書(PHP)」などがある。

 

 

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