連載タイトルのアクセシブルデザイン(AD)は、年齢の高低や障害の有無に関わらず共に使えるように工夫された製品であり、国内の市場規模は3兆円を超えている。

 

髪を洗う時に目をつむる多くの人と目の不自由な人が、リンスやボディソープ容器と触って識別するために、シャンプー容器側面と上部に付けられたギザギザは、工夫の一例だ。

 

ほかにも、牛乳の紙容器の上部にある半円の切り欠き、缶アルコール飲料上部にある「おさけ」と表示された点字などは、同様の形の容器で中身が異なるものと触って識別するための工夫である。

 

このような工夫は、百聞は「一見」ならぬ、「一触」に如かず、各種の展示会などでは、来場者に触ってもらうことが有効である。しかし、どちらの容器も縦長のため、触ろうとすると隣のリンス容器に触れ倒してしまうという別の課題もある。

 

 

 

東京都杉並区の西荻地域区民センター協議会では、コロナ禍前からAD製品の展示を各種イベントで実施、子どもから高齢者まで広い層が体験している。しかし「製品を倒してしまう課題」は解決していなかった。

 

担当になった同協議会の吉田優子さんは、多くの人にストレスなく、興味をもってもらうにはと考えた。その結果考え出したのが、パネルに製品を貼り付けることだった。しかし、シャンプー容器、リンス容器、牛乳パックをそのままパネルに貼ると、ギザギザや切り欠きが強調されない。そのため、考えたのが斜めにカットしてパネルに貼ることだった。

 

吉田優子さんと工夫されたAD展示

 

 

 

先日行われたイベントで吉田さんが作ったパネルは、来場者に、ADに対してストレスなく関心を持ってもらう役目を見事に果たした。良い工夫は、良い伝え方が加わることによって、初めてしっかり伝わっていくことを、吉田さんの秀逸な発想と工夫が教えてくれている。

 

 

 

 

星川 安之氏(ほしかわ やすゆき)
公益財団法人共用品推進機構 専務理事
年齢の高低、障害の有無に関わらず、より多くの人が使える製品・サービスを、「共用品・共用サービス」と名付け、その普及活動を、玩具からはじめ、多くの業界並びに海外にも普及活動を行っている。著書に「共用品という思想」岩波書店 後藤芳一・星川安之共著他多数

 

 

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