看護師である道祖尾綾乃社長が立ち上げたFilo(東京都大田区)は同区に7月、「ナーシングケアホーム結」を開設した。施設基準を取らない、看護師が24時間対応する自費を主体とした在宅療養のための住まいだ。ホームが目指す役割などについて、道祖尾社長に話を聞いた。

 

F i l o
道祖尾綾乃社長

 

 

看護24時間 受入制限なし

 

 

――経歴を聞かせてください。

道祖尾 元は救命救急の病棟看護師でしたが、在宅医療に携わり14年目になります。在宅療養支援診療所の支援や訪問看護事業所の立ち上げなどに従事し、大田区を中心に多くの施設で管理職に就きながら、ケアマネジャー、認知症認定看護師の資格も取得。訪問看護師として働く中、組織に属しながら在宅患者を24時間支えることの難しさや、老々介護など保険制度で対応しきれない課題を感じ、独立しました。

 

 

 

――「ナーシングケアホーム結」について。

道祖尾 定員は現在7名で、満室。入居者の平均要介護度は4〜5で、50歳から94歳まで、病状は精神疾患からがん末期まで様々です。「介護する側、される側すべての方の在宅療養の支援」を目指しており、年齢や病気の制限はありません。保険の枠にとらわれず、退院後のリハビリや緊急時、入院・施設入居前の預かり、介護者のレスパイトなど自由に利用できます。

 

 

 

――看護師による運営ならではの対応とは。

道祖尾 退院後、在宅復帰までの間の利用では、呼吸器系の機能確立や嚥下の練習などを支援。家族やヘルパーには「吸引・胃ろうの手技」「点滴機器の手技」「血糖・インスリンの摂取」「褥瘡や傷の処置」などを、一人ひとりの生活に寄り添い指導します。

医師や言語聴覚士、理学療法士、作業療法士など多職種との連携も強みで、すでに看取りも行いました。提携医療機関は、高齢者の在宅医療に実績を持つ医療法人至髙会たかせクリニックで、夜間連携やポリファーマシーの観点でも安心です。

 

 

万全の医療体制で対応。日常の関わりと生体モニターで容態変化をキャッチする

 

 

 

――他入居施設からの利用もあるとのこと。

道祖尾 特定施設やグループホームなどからの受け入れ実績があります。例えば、新型コロナウイルス感染症で隔離対応をしていたが、個室内で転倒・骨折し、水分・食事摂取ができなくなり当ホームに入居したケースでは、数日で回復まで支援。この場合は「なぜ食べられないのか」「どの機能が残っているか」などを昭和大学病院の口腔リハビリテーション科とやりとりして究明し対応しました。利用者のその後の生活や環境を見据え、食事・薬・リハビリなどで調整しています。

 

 

 

――職員体制や費用について。

道祖尾 現在看護師8名、ヘルパー1名で24時間対応しています。必ず看護師が常駐し、心電図・血圧・血中酸素濃度・呼吸数などをリアルタイムで測定・記録する生体モニターも設置。この情報は連携する在宅医も遠隔で確認でき、また、救急隊を要請する事態でも、プリントアウトして提示できるなど即時の情報連携に寄与しています。

訪問看護、訪問介護、重度訪問介護などを医療保険、介護保険などの枠で提供していますが、ホーム自体の施設基準は取っていません。基本料金は、通常利用(15日間以上)1ヵ月10万円、一時利用(14日間以内)1回5万円。これに加えて光熱費込みの住居費が1日あたり1万1000円です。

 

 

 

――今後の運営について聞かせてください。

道祖尾 当ホームは「在宅療養に心のゆとりをつくる場所」です。共生型にしていきたい考えですが、介護保険と医療保険の制度の狭間で抱える課題もあります。また、他入居施設からの一時転居のケースでは当ホームで介護保険が利用できないため、一旦退所してもらう必要があることや、現在の利用料金では低所得者に対応できないことも解決したい点です。

 

今後の超高齢社会、高齢者世帯の増加などの社会課題への対応を見定めながら、困難を抱える在宅療養者に寄り添える運営を目指します。

 

 

シェアハウスの間取りで全室個室。入居者はホーム内を自由に歩き、散歩へも

 

 

 

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